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肩関節の内旋に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

肩関節の内旋運動は、上腕骨の前面に停止する肩甲下筋や大胸筋、広背筋といった筋肉が作用して行われます。

その他にも大円筋や三角筋前部繊維など、比較的多くの筋肉がその運動に関与しています。

このページでは。肩関節の内旋に作用する筋肉の種類と、その走行・支配神経から拮抗筋までを詳しく解説したいと思います。

肩関節内旋運動の概要

肩関節は、上腕骨と肩甲骨で構成される関節で、その形状から球状関節と呼ばれています。

また、運動に関わる骨を全て含めると、肩関節は肩甲骨と上腕骨に、鎖骨・胸骨・胸郭を含めて考えられていて、これを広義の肩関節と呼びます。

肩関節の内旋運動は、自由度の高い肩関節の特徴的な関節運動で、その運動範囲は80°程と言われています。

ただし、この運動範囲は肩関節の屈曲角度によって変化するので、角度によっては90°まで運動するとも言われています。

肩関節の内旋に作用する筋肉の一覧

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
肩甲下筋 肩甲下窩 上腕骨小結節 肩甲下神経 C5 – C6
大胸筋
鎖骨部
胸肋部
鎖骨
胸骨・肋軟骨
上腕骨結節間溝 外側胸筋神経 C5 – C6
広背筋 第6胸椎から第5腰椎
腸骨稜
上腕骨小結節稜 胸背神経 C6 – C8
大円筋 肩甲骨下角 上腕骨結節間溝 肩甲下神経 C5 – C6
三角筋前部 鎖骨外側1/3 上腕骨骨幹部
三角筋粗面
腋窩神経 C5 – C6

肩関節の内旋に作用する筋肉は、上の表の通りです。

主な動作は肩甲下筋・大胸筋・広背筋・大円筋で行い、三角筋前部は補助的に作用します。

肩関節周囲の多くの筋肉が肩関節の内旋運動に関与していることが分かります。

中でも、肩関節の回旋運動に大きく関与する回旋筋腱板 (ローテーターカフ)の1つである肩甲下筋の働きは重要です。

肩関節内旋の主動作筋

肩関節の内旋には、様々な筋肉が関与しますが、その中でも肩甲下筋や大胸筋、広背筋が主動作筋として働きます。

それぞれの筋肉についてさらに詳しくみていきましょう。

肩甲下筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
肩甲下筋 肩甲下窩 上腕骨小結節 肩甲下神経 C5 – C6

肩甲下筋は肩甲下窩から起こる筋肉で、肩甲骨の肋骨面から幅広い起始を持っています。

全ての筋は外方に走行し、上腕骨の小結節や間接包の前面に停止し、大きな三角形を作ります。

棘上筋・棘下筋・小円筋と共にローテーターカフを構成する筋肉の1つとして知られています。

主な働きは肩関節の内旋で、肩甲骨の大部分から起こる広い起始から、強力に上腕骨を内旋方向に動かします。

関節運動に関しての作用は肩甲骨の内旋のみですが、他のローテーターカフと共に、不安定な肩関節を支持・固定する役割も持っています。

大胸筋の起始・停止・支配神経

大胸筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
大胸筋
鎖骨部
胸肋部
鎖骨
胸骨・肋軟骨
上腕骨結節間溝 外側胸筋神経 C5 – C6

大胸筋は、鎖骨から起こる鎖骨部と、胸骨と肋軟骨から起こる胸肋部が肩関節の内旋に作用します。

それぞれの起始から外方に走行し、上腕骨結節間溝や外側縁に停止します。

前胸部を覆う大きな筋肉で、肩甲下筋と共に肩関節の内旋に作用する他、肩関節の屈曲初期や、内転・水平内転にも作用します。

肩関節の屈曲に作用する筋肉の種類と起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

広背筋の起始・停止・支配神経

広背筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
広背筋 第6胸椎から第5腰椎
腸骨稜
上腕骨小結節稜 胸背神経 C6 – C8

広背筋は、第6 – 第12胸椎・第1 – 第5腰椎・仙椎・腸骨稜・第9 – 12肋骨から起こり、上外方に走行し、上腕骨結節間溝や小結節稜に停止する筋肉です。

腰背部の広い面を走行する筋肉で、 人体で最大の筋肉です。

背部から上腕骨の前面に回り込んで付着しているため、収縮すると肩関節の内旋に作用します。

その他にも、肩関節の伸展や内転に作用する筋肉です。

肩関節の伸展に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

大円筋の起始・停止・支配神経

大円筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
大円筋 肩甲骨下角 上腕骨結節間溝 肩甲下神経 C5 – C6

大円筋は、肩甲骨下角の背面かつ外側縁から起こり、外方に走行して、上腕骨結節間溝に停止する扁平で厚い筋肉です。

肩甲骨の外側から上腕骨の前面に回り込んでいるため、肩関節の内旋に作用します。

また、肩関節の内転や伸展にも作用します。

肩関節内旋の補助筋

肩関節の内旋には、上腕骨前面に付着する筋肉が複数関与してます。

主動作筋の他にも、三角筋などが補助的に肩関節の内旋に作用します。

三角筋前部の起始・停止・支配神経

三角筋前部

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
三角筋前部 鎖骨外側1/3 上腕骨骨幹部
三角筋粗面
腋窩神経 C5 – C6

三角筋には、前部・中部・後部と3つの繊維がありますが、肩関節の内旋に作用するのは前部繊維のみです。

三角筋前部繊維は、鎖骨外側1/3から起こり、外下方に走行して、上腕骨の三角筋粗面に停止します。

三角筋は全体でみると肩関節のほとんどの動きに関与する筋肉ですが、前部繊維の働きとしては、主に肩関節の屈曲があります。

その他にも、肩関節の内旋や水平内転にも作用します。

肩関節内旋の拮抗筋

肩関節の内旋に対して、拮抗作用を持つのは肩関節の外旋に働く筋肉です。

その中でも、最も強力な作用を持つのは、ローテーターカフの1つである、棘下筋です。

棘下筋の起始・停止・支配神経

棘下筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
棘下筋 肩甲骨棘下窩
棘下筋膜
上腕骨大結節 肩甲上神経 C5 – C6

棘下筋は肩甲棘下窩から広く起こり、外方に向かって走行し、上腕骨大結節に停止する筋肉です。

肩関節内旋の主動作筋であり、同じくローテーターカフの1つである肩甲下筋とは、ちょうど肋骨面・背面を肩甲骨を挟んで走行している形になります。

また、停止する上腕骨に対しても外側面と内側面に停止するので、走行を見れば2つの筋の拮抗作用がイメージしやすいでしょう。

肩関節の外旋に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

肩関節の内旋に作用する筋肉のまとめ

肩関節の内旋には、肩甲下筋・大胸筋・広背筋・大円筋と複数の筋肉がその運動に関与しています。

大きくて強力な筋肉が強力して作用しているため、肩関節の内旋には拮抗作用である外旋に対して強い力が働くことが分かります。

内旋筋は強力な力を発揮する筋肉で、様々な動作で活躍しますが、過度に緊張すると内旋筋と外旋筋の均衡が崩れて、立位姿勢の肩峰の位置に直接的に影響を及ぼします。

バランス療法の手技でも内旋筋を調整する手技はいくつか存在していて、実際の施術にも用いることが多いので、内旋筋の走行や働きをイメージしておきましょう。