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足関節の底屈に作用する作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

足関節の底屈には、下腿三頭筋と呼ばれる腓腹筋・ヒラメ筋が主に働いて行われます。

メインの動作は下腿三頭筋ですが、多くの筋肉が補助的に働いています。

このページでは、足関節の底屈に作用する筋肉の種類と、その走行・支配神経から拮抗筋までを詳しく解説したいと思います。

足関節底屈運動の概要

足関節は脛骨・腓骨・距骨・踵骨の骨で構成されていて、距腿関節・距骨下関節・遠位脛腓関節の3つの関節を有する複合的な関節です。

足関節全体で見ると底屈・背屈・内返し・外返しと比較的自由度の高い関節ですが、これは距腿関節と、距骨下関節がそれぞれが異なる形状と運動方向を持っていることで成り立っています。

距腿関節は螺旋関節、距骨下関節は顆状関節、という形状を持っていて、それぞれ前後的な運動方向と、左右の運動方向を持っています。

また、足関節の周囲が靭帯によって運動を制御されることによって、骨性の安定と比較的自由度の高い関節運動の両方が実現されています。

足関節の底屈運動は、足関節の運動の中で最も広い可動域で、45°程度の可動域があります。

足関節の底屈運動は前額軸・矢状面上の運動です。

足関節の底屈に作用する筋肉の一覧

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
腓腹筋
内側頭
外側頭
大腿骨内側顆
大腿骨外側顆
踵骨 脛骨神経 S1 – S2
ヒラメ筋 腓骨頭 踵骨 脛骨神経 S1 – S2
後脛骨筋 脛骨・腓骨近位骨幹部 舟状骨・楔状骨・立方骨
第2-4中足骨
脛骨神経 L4 – L5
足底筋 大腿骨後外側 踵骨 脛骨神経 S1 – S2
長腓骨筋 腓骨頭 第1-2中足骨
第1楔状骨
浅腓骨神経 L5 – S1
短腓骨筋 腓骨遠位外側 第5中足骨粗面 浅腓骨神経 L5 – S1
長趾屈筋 脛骨骨幹部後面 第2 – 第5趾末節骨 脛骨神経 L5 – S2
長母趾屈筋 腓骨骨幹部後面 母趾末節骨底面 脛骨神経 L5 – S2

足関節の底屈に作用する筋肉の一覧は、上の表の通りです。

主な働きは下腿三頭筋なのですが、補助的に作用する筋肉の種類が多いのが特徴です。

下腿三頭筋以外は、底屈に作用する力は強くありませんが、下腿後面や足底を走行する多くの筋肉が足関節の底屈に関与しています。

支配神経はほとんど坐骨神経の枝である脛骨神経です。

足関節底屈の主動作筋

足関節の底屈に作用する筋肉の種類は多いですが、最も重要なのはやはり主動作筋である下腿三頭筋です。

下腿三頭筋は腓腹筋の内・外頭と、ヒラメ筋の総称で、アキレス腱を作る筋肉です。

それぞれの筋肉について、詳しく見ていきましょう。

腓腹筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
腓腹筋
内側頭
外側頭
大腿骨内側顆
大腿骨外側顆
踵骨 脛骨神経 S1 – S2

腓腹筋は、内側頭と外側頭の2つの起始を持つ筋肉です。

内側頭は、大腿骨内側顆や膝関節の間接包から起こり、外側頭は大腿骨外側顆や骨幹部後面から起こります。

2つの起始からそれぞれです中心部に向かって走行し、合流して踵骨腱となって踵骨の後面中央部に停止します。

支配神経はどちらも脛骨神経の支配を受けています。

腓腹筋はいわゆるふくらはぎと呼ばれる筋肉で、下腿後面の最も浅層を走行する筋肉です。

大腿骨に起始を持ち、膝関節と足関節をまたぐ二関節筋であることも特徴的です。

腓腹筋の主な動作は足関節の底屈ですが、膝関節の屈曲にも補助的に作用します。

また、足関節の外返しにも作用します。

腓腹筋は、足関節の底屈で容易にその収縮を確認できますし、発達した腓腹筋は内側頭と外側頭の走行が目で確認できます。

ヒラメ筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
ヒラメ筋 腓骨頭 踵骨 脛骨神経 S1 – S2

ヒラメ筋は、腓骨頭や後面、腓骨骨幹部、そして脛骨のヒラメ筋線や脛骨骨幹部内側から起こり、腓腹筋と共に踵骨腱となって踵骨後面に停止します。

支配神経は、腓腹筋と同じく脛骨神経の支配を受けています。

ヒラメ筋は、腓腹筋とは異なり足関節だけに関わる単関節筋ですが、腓腹筋より幅広く大きな筋肉で、腓腹筋のすぐ深層を走行しています。

ヒラメ筋の主な作用は、足関節の底屈ですが、足関節の内返しにも作用します。

また、底屈は関節運動だけではなく、静止立位時でも常に働いています。

前方にかかっていく重心に対して、身体が倒れないように足関節の角度を調整しています。

足関節の底屈に関しては、腓腹筋とこのヒラメ筋で構成される下腿三頭筋を抑えておけば十分です。

足関節底屈の補助筋

足関節の底屈には、後脛骨筋や長・短腓骨筋といった下腿の筋肉から、足底筋や母趾屈筋といった足趾の運動に関与する筋肉まで多くの筋肉が補助的に作用します。

主な動作は下腿三頭筋で行われるので、作用としては小さいですが、多くの筋肉が複合的に働き、足関節の底屈運動を起こしているのが分かります。

それぞれの筋肉について詳しく見ていきましょう。

後脛骨筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
後脛骨筋 脛骨・腓骨近位骨幹部 舟状骨・楔状骨・立方骨
第2-4中足骨
脛骨神経 L4 – L5

後脛骨筋は脛骨骨幹部外側の近位と腓骨骨幹部後内側の近位や骨間膜から起こり、下方向に走行して内側に回り込み、舟状骨粗面や楔状骨・立方骨・第2・3・4中足骨に停止する筋肉です。

脛骨神経の支配を受けていて、脛骨近位から足底まで長い走行を持っています。

足の屈曲筋の中では最も深層を走行する筋肉で、脛骨と腓骨から起こった筋が細く複数に別れて停止する特徴的な走行を取ります。

主な働きとしては、足の内返し運動や、足底のアーチを支持するという役割があります。

立位時の足の負荷を分散させて、バランスを取る重要な役割を果たしています。

足関節の底屈には補助的に作用します。

足底筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
足底筋 大腿骨後外側 踵骨 脛骨神経 S1 – S2

足底筋は、大腿骨後面の外側上顆上部から起こり、下内方に走行して、アキレス腱と合流し、踵骨に停止する筋肉です。

支配神経は、脛骨神経です。

膝関節と足関節にまたがる二関節筋で、大腿骨から踵骨にかけて長い走行を取る筋肉です。

その筋腹は小さくて短く、脛骨の上部付近では細い腱となって下腿の内側に向かって走行します。

腓腹筋とヒラメ筋の間を走行する筋肉ですが、その作用は弱く、膝関節の屈曲と足関節の底屈に補助的に作用します。

膝関節の屈曲に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

長腓骨筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
長腓骨筋 腓骨頭 第1-2中足骨
第1楔状骨
浅腓骨神経 L5 – S1

長腓骨筋は、腓骨頭や腓骨近位骨幹部から起こり、下方に走行して、外果の後部を回り込んで第1・2中足骨底部や第1楔状骨に停止する筋肉です。

短腓骨筋より浅層を走行している筋肉で、浅腓骨神経の支配を受けています。

下腿の外側にその筋腹を確認することができ、下腿下部にかけて細い腱となって停止します。

長腓骨筋の主な働きとしては、足関節の外返しや足底アーチの支持があります。

足関節の底屈には補助的に作用します。

足底の内側に停止する後脛骨筋や足底筋の反対側に停止する筋肉です。

短腓骨筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
短腓骨筋 腓骨遠位外側 第5中足骨粗面 浅腓骨神経 L5 – S1

短腓骨筋は、腓骨骨幹部外側の遠位から起こり、後下方に走行して、外果の後方を回り込み、第5中足骨に停止する筋肉です。

長腓骨筋の深層を走行していて、外果後方で腱となって合流しています。

主な働きは、長腓骨筋とともに足関節の外返しに働くことです。

足関節の底屈に関しては補助的に作用します。

長趾屈筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
長趾屈筋 脛骨骨幹部後面 第2 – 第5趾末節骨 脛骨神経 L5 – S2

長趾屈筋は、脛骨骨幹部近位後面から起こり、下方に走行して、第2から第5趾の末節骨に停止する筋肉です。

支配神経は脛骨神経です。

下腿内側の深部を走行する筋肉で、起始部から徐々に大きくなって下腿下部で再び細くなり、腱となって足底方形筋の腱と合流し、外側4趾に停止する長い走行を持った筋肉です。

主な働きは、第2から第5趾のMP・PIP・DIP関節の屈曲で、足関節の底屈には補助的に作用します。

また、足の内返しにも作用します。

長母趾屈筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
長母趾屈筋 腓骨骨幹部後面 母趾末節骨底面 脛骨神経 L5 – S2

長母趾屈筋は、腓骨骨幹部の後面から起こり、下内方に向かって走行し、母趾末節骨底面に停止する筋肉です。

支配神経は脛骨神経です。

下腿外側の深部を走行する筋肉で、下腿後面の外側から、下腿を交差するように走行して、距骨・踵骨の内側を通って腱となり、母趾に停止します。

主な働きは、母趾のIP関節の屈曲で、母趾のMP関節の屈曲や、足関節の底屈・内返しに補助的に作用します。

足関節底屈に作用する筋肉のまとめ

足関節の底屈には、下腿三頭筋が主動作筋となって強力に作用し、下腿に起始を持つ多くの筋肉がその働きを補助しています。

長・短腓骨筋以外は、脛骨神経が支配する筋肉で構成されているのが特徴的です。

足関節は、底屈することによってその可動域が大きくなるので、単純に前後的な運動に加えて、内外側から様々な筋肉が運動に関与してその運動をサポートしています。

バランス療法では、足関節の底屈に関わる筋肉は、膝関節の屈曲筋と協調して働くと考えています。

膝関節の屈曲筋とともに、足関節の底屈筋が過緊張を起こせば、膝の伸展・足関節の背屈が十分に行えず、身体の重心が反対側の下肢に偏っていきます。

左右の下肢でしっかりと荷重を分散させるためにもこれらの筋の左右差を整えるのは重要です。

手技の中にも足底や下腿から脛骨神経系の筋のバランスを整える手技がいくつかあるので、走行をイメージしならが手技を行いましょう。