東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2018年12月の東京セミナーは僧帽筋の調整を行いました

12月の東京セミナーは僧帽筋の調整でした。

バランス療法のほとんどの手技がシンプルですが、僧帽筋の調整は特にシンプルです。

シンプル過ぎて逆にしっかりと変化させるには練習が必要な手技でもあります。

手技のポイントと臨床での使い方などをまとめてみます。

肩関節検査と僧帽筋

どんな手技をするにも事前に検査をする必要があります。

この手技に関しては肩関節検査をし、左右どちらの僧帽筋が緊張しているかを確認する必要があります。

左右の肩関節を他動的に屈曲運動させ、屈曲しやすい方が僧帽筋(上部と中部)の緊張側となります。

今回は僧帽筋中部の手技になります。

僧帽筋の調整を身につける

準備

検査で僧帽筋の緊張側を確認後、受け手を伏臥位に寝かせます。

術者は僧帽筋緊張側の片手は仙骨部、片手は僧帽筋中部に手掌が置ける位置に座ります。

僧帽筋に近い側の膝を立てて座ると、手技がかけやすくなります。

手技をかける

片方の手掌を仙骨部に呼気時に置き、もう片方の手掌を僧帽筋中部繊維の辺りに置き、呼気で肩甲骨内側縁から脊柱に向けて刺激を入れます。

受け手が3〜4回呼吸をしている間、手掌で刺激を入れ続け、最後も呼気で手を離します。

入れる時は外側から中心に手掌を動かしたので、外す時も中心から外側に動かし手技を終えます。

この一連の動きを2〜3回繰り返します。

この時に注意点は、肩甲骨に触れないようにする事と下(床)の方に強く押さえない事です。この2点のミスは呼吸運動の妨げとなり、結果受け手に緊張感を与える事になります。

確認

手技の効果の確認をします。

臨床では続けて他の手技に移行する場合がほとんどですが、練習では手掌の強さで検査結果が変わるので、毎回検査しどの感覚が一番良いかを掴む必要があります。

臨床で使う時

臨床では下記の場合によく使います。

肩関節検査が確定し難い場合。

五十肩など肩関節を動かす手技が出来ない場合

肩関節検査が確定し難い場合

バランス療法は、3つの検査が確定するとセラピストは安心して気持ちよく施術をする事ができます。

しかし、患者さんの中には極端に力が抜けず、まともに検査をさせてもらえず施術が組み立てられないケースもあります。

そんな場合はこの僧帽筋からの調整をして、検査を確定させていく事ができます。

僧帽筋が右が緊張か左が緊張か分からない患者さんが居たとします。

分からないまま施術を進める事は、患者さんの状況を知らぬまま進める事になり、最終的にこの患者さんに良い施術を提供出来ません。

この手技を左右どちらにもかけ、その時の膝関節検査の結果を比較すれば僧帽筋の緊張がどちらかが分かり、結果的に肩関節検査がどちらかが分かります。

この方法を僕はいつも使っています。検査が9割間違っていないと思っても、100%確定させるために使います。

五十肩など肩関節を動かす手技が出来ない場合

臨床では肩関節に痛みがあり来院される患者さんは大勢います。その場合、肩関節を動かす事は患者さんにとって苦痛であり、全身の筋肉に緊張を与えるので、バランス療法では可能な限り痛みを与えないように施術します。

一般的によくあるケースとして五十肩(肩関節周囲炎)などの場合、この僧帽筋の調整をよく使います。

ただ五十肩の場合、痛みがある患側が僧帽筋緊張なのか?健側が僧帽筋緊張なのか?検査をしないと分かりません。しかし、肩関節検査のみでは肩関節屈曲に痛みが出るため正確な判断がつきません。

よってこの場合も先ほど書いた、膝関節検査を用いて肩関節検査を確定させる以外方法がありません。

バランス療法は痛みの施術ではないので、痛い側が僧帽筋緊張とは考えません。

実際の臨床でも、健側が僧帽筋緊張というケースも多くあります。50代の女性が左右同時に五十肩になり来院されました。この場合も左右どちらが僧帽筋緊張かを確認して施術を組み立てました。半年かかりましたが、今は痛みなく生活できるようになりました。

あと五十肩の場合は、一般的なうつ伏せが痛みで出来ません。よって体に両上肢を添わした状態で手技をかけると効果的です。

手技中の施術者の動き

この手技の動きはほんの僅かな動きです。

一見すると誰でも簡単に出来そうな手技ですが、実際は下肢に強い力を入れ下半身の安定を作り、その安定から連動させ上肢の動きを作っています。

下半身の動き

下半身は、膝を立てた側が床に足底部がついています。

よって足関節をしっかり底屈、膝関節はそのままの角度でハムストリングスを収縮させ、股関節もそのままですが伸展させる方向を意識します。

反対側は、床に足背部と下腿前面外側がついています。

よって足関節をしっかり背屈、膝関節はそのままの角度で大腿四頭筋を収縮させ、股関節もそのままの角度で屈曲方向に意識します。

この時点で下半身の筋緊張はかなり強く、慣れていない人は2時間の練習で筋肉痛を起こします。

上半身の動き

上半身は下半身に比べ筋収縮させませんが、ある程度は筋肉に収縮させながら手技を行います。

仙骨部の固定は、主に大胸筋を収縮させます。僧帽筋への刺激は三角筋前面と僧帽筋を収縮させます。

文字にすると簡単ですが、実際にするのは練習が必要です。特に難しいのは、上記の逆側の筋肉を同時に弛緩させなければならない点です。

この動作が出来れば、この手技に限らずほとんどの手技や検査が上達し、思い通りの結果になるはずです。

こんなことを書いている僕も、まだまだ出来ている時とそうでない時があり、まだまだ修行の身だと感じます。

セミナー後記

身体のことを勉強すればするほど、奥深さ、面白さ、難しさ、不思議さを感じます。

バランス療法の理論を使い、色々な可能性を感じた1年でした。(年が明け書いていますが)

2019年は、この数年間研究し実験しやっと結果が出せるようになった新しい施術方法を近日発表する予定です。これで今より多くの苦しんでいる患者さんの手助けになればと思っています。