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足関節の背屈に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

足関節の背屈運動は、前脛骨筋が主に働いて行われます。

その他にも、第三腓骨筋や足趾の伸筋群が補助的に作用していますが、足関節の底屈ほど多くの筋が関与している運動ではありません。

このページでは、足関節の背屈に作用する筋肉の種類と、その走行・支配神経から拮抗筋までを詳しく解説したいと思います。

足関節背屈運動の概要

足関節は脛骨・腓骨・距骨・踵骨の4つの骨で構成されていて、それぞれの骨が距腿関節・距骨下関節・遠位脛腓関節として関節を成しています。

足関節はこれら4つの骨が作る3つの関節を合わせた複合的な関節です。

足関節は3つの関節がそれぞれ前後・左右の運動方向を有しているため、比較的自由度の高い関節ですが、背屈運動に関しては可動域が少なく、約20°程の可動域しかありません。

静止立位では足関節の背屈をするとよく分かりますが、前足部分がわずかに地面から離れるだけで、すぐに可動域に制限がかかります。

足関節の背屈運動は、前額軸・矢状面上での運動です。

足関節の背屈に作用する筋肉の一覧

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
前脛骨筋 脛骨外側顆 第1楔状骨
第1中足骨
深腓骨神経 L4 – L5
第3腓骨筋 腓骨内側面 第5中足骨 深腓骨神経 L5 – S1
長趾伸筋 脛骨外側顆 第2 – 第5趾
中節骨・末節骨
深腓骨神経 L5 – S1
長母趾伸筋 腓骨骨幹部 母趾 深腓骨神経 L4 – S1

足関節の背屈に作用する筋肉は、上の表の通りです。

ほとんどの筋肉が、下腿骨から起こり足趾に停止していて、深腓骨神経の支配を受けている筋肉で構成されています。

足関節背屈の主動作筋

足関節の背屈の主動作筋は前脛骨筋です。

その他の筋肉は補助筋で、前脛骨筋は、足関節の背屈筋群の中で最も強い作用を持っています。

前脛骨筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
前脛骨筋 脛骨外側顆 第1楔状骨
第1中足骨
深腓骨神経 L4 – L5

前脛骨筋は、脛骨外側顆や外側面、骨間膜から起こり、下方に走行して第1楔状骨の内側面・底面、第1中足骨の底面に停止する筋肉です。

支配神経は深腓骨神経の支配を受けています。

下腿の中心からやや外側を走行している筋肉で、足関節の背屈運動をすれば、すぐにその収縮の様子が観察できます。

足関節背屈の主動作筋として働く他、足関節の内返しにも作用します。

また、第1楔状骨や第1中足骨の底面に回り込んで付着しているため、足底の内側縦アーチを支える筋肉としても知られています。

足関節背屈の補助筋

足関節背屈の補助筋には、第3腓骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋があります。

全て下腿骨から足趾に向かって走行する筋肉で、足関節の背屈の際に前脛骨筋と共に補助的に働きます。

第3腓骨筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
第3腓骨筋 腓骨内側面 第5中足骨 深腓骨神経 L5 – S1

第3腓骨筋は、腓骨遠位内側面や骨間膜から起こり、下方に走行して、第5中足骨の骨幹部や背面に停止する筋肉です。

腓骨遠位から起こる短い走行の筋肉で、深腓骨神経の支配を受けています。

主な働きとして、足関節の背屈に作用する筋肉ですが、あくまでも前脛骨筋の補助筋として働きます。

また、下腿のやや外側を走行していることから、足関節の外返しにも補助的に作用します。

長趾伸筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
長趾伸筋 脛骨外側顆 第2 – 第5趾
中節骨・末節骨
深腓骨神経 L5 – S1

長趾伸筋は脛骨外側顆の外側面や腓骨骨幹部内側、骨間膜から起こり、下方に向かって走行し、4つの腱索に分かれて第2・3・4・5趾の中節骨・末節骨の背側面に停止します。

前脛骨筋の外側を脛骨近位から腱となって末節骨まで長い走行をとる筋肉で、深腓骨神経の支配を受けています。

長趾伸筋は、その名の通り足趾を伸展させる筋肉で、第2 – 第5足趾のMP・DIP・PIP関節の伸展に作用します。

足関節の背屈には補助的に作用し、その他にも足関節の外返しの補助筋としての作用もあります。

長母趾伸筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
長母趾伸筋 腓骨骨幹部 母趾 深腓骨神経 L4 – S1

長母趾伸筋は、腓骨骨幹部内側や骨間膜から起こり、下方に走行して、母趾末節骨底の背面に停止する筋肉です。

前脛骨筋と長趾伸筋の間で2つの筋の深層を走行していて、深腓骨神経の支配を受けています。

長母趾伸筋は母趾のMP・IP関節の伸展に働く筋肉です。

他の4趾が長趾伸筋によって伸展方向に動くことに対して、母趾の伸展だけはこの筋肉の独立支配を受けています。

足関節の背屈には補助的に作用し、他には前脛骨筋と共に足関節の内返しに作用します。

足関節背屈の拮抗筋

足関節の背屈に拮抗作用を持つのは、足関節の底屈筋群です。

足関節の底屈には、主動作筋と補助筋を合わせると複数の筋肉が関与していますが、最も強力な拮抗作用を持つのは下腿三頭筋です。

下腿三頭筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
腓腹筋
内側頭
外側頭
大腿骨内側顆
大腿骨外側顆
踵骨 脛骨神経 S1 – S2
ヒラメ筋 腓骨頭 踵骨 脛骨神経 S1 – S2

下腿三頭筋は内側頭と外側頭の2頭を持つ腓腹筋と、ヒラメ筋を合わせた総称です。

下腿三頭筋が収縮すると、足関節を強力に底屈させるので、足関節背屈筋とは拮抗作用を持つことになります。

足関節の底屈と背屈を見ても、底屈可動域の方が大きいですし、前脛骨筋の筋腹と下腿三頭筋を比較すると、明らかに下腿三頭筋の方が大きく、収縮する力としても強力です。

歩行動作などでは、足関節の底屈と背屈が繰り返して行われますが、それぞれの筋肉が歩行周期に合わせて収縮し、足関節の微妙な角度を調整しています。

足関節の背屈に作用する筋肉のまとめ

足関節の背屈には、主動作筋である前脛骨筋と補助筋である第3腓骨筋や、足趾の伸筋が働いています。

足関節の背屈自体の可動域は少ないですが、立位時などは足関節が背屈方向に位置しています。

また、歩行などの運動時では、底屈位となった足関節を背屈方向に戻す為に背屈筋群が作用します。

バランス療法では、足関節の背屈筋は、股関節の屈曲筋・膝関節の伸展筋と協調して働くと考えています。

下肢の手技を行う際に、足関節部分からアプローチする手技が多いので、特に重心機能を調整する手技を行う時は、足関節の筋をイメージしならが操作すると良いでしょう。