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前腕の回外に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

前腕の回外運動は、回外筋・上腕二頭筋が主に作用して行われる関節運動です。

このページでは、前腕の回外に作用する筋肉の種類と、その走行・支配神経から拮抗筋までを詳しく解説したいと思います。

前腕回外運動の概要

前腕の回外運動は、橈尺関節で行われています。

橈尺関節には、上腕部に近い近位橈尺関節(上橈尺関節)と、手関節部に近い遠位橈尺関節(下橈尺関節)があります。

関節の形状は車軸関節と呼ばれていて、橈骨は隣接する尺骨にある、橈骨切痕にはまりこみ靭帯で固定されているため、回旋運動が可能になっています。

橈尺関節は肘関節の関節包に包まれていますが、屈曲伸展運動には関与せず、この回旋運動だけを行います。

解剖学的肢位では、前腕は回外位になっているので、ほとんど可動域はありませんが、回内位からであれば約80°程の可動域を持っています。

完全回内位から完全回外位置に運動した場合を考えると、80°以上の可動域はありますが、これは前腕のみではなく、肩関節の内外旋などが加わっての可動域になります。

前腕の回外に作用する筋肉の一覧

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
回外筋 上腕骨外側上顆 橈骨骨幹部 橈骨神経 C6 – C7
上腕二頭筋 短頭 : 肩甲骨烏口突起
長頭 : 肩甲骨関節上結節
橈骨粗面 筋皮神経 C5 – C6
腕橈骨筋 上腕骨外側顆上稜 橈骨遠位端 橈骨神経 C5 – C6

前腕の回外に作用する筋肉は、上の表の通りです。

関与する筋肉はそれほど多くはなく、上腕から起こる筋肉と、一部肩甲骨から起こる筋肉で前腕の回外運動を担っています。

前腕回外の主動作筋

前腕の回外が、名称の通り回外筋と、その走行から上腕二頭筋が主動作筋となって行われます。

回外筋の起始・停止・支配神経

回外筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
回外筋 上腕骨外側上顆 橈骨骨幹部 橈骨神経 C6 – C7

回外筋は上腕骨外側上顆から起こり、下方に走行し、橈骨粗面や斜線部に停止する筋肉で、橈骨神経の支配を受けます。

短い走行の筋肉ですが幅は広く、上腕骨外側上顆を中心に、肘関節の外側側副靭帯や橈骨輪状靭帯などの靭帯にも筋が付着しています。

起始と停止が近い筋肉で、前腕の回外以外にはその機能を発揮しません。

解剖学的肢位では、上腕から前腕の外側を走行する筋肉ですが、前腕が回内位になると橈骨の回旋運動に合わせて、下内方に走行するような形状になります。

回内位からこの筋肉が収縮すると、橈骨を回旋させて、尺骨に対して橈骨が平行になるように、前腕を回外方向に運動させます。

上腕二頭筋の起始・停止・支配神経

上腕二頭筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
上腕二頭筋 短頭 : 肩甲骨烏口突起
長頭 : 肩甲骨関節上結節
橈骨粗面 筋皮神経 C5 – C6

上腕二頭筋は、短頭と長頭の2つの起始を持つ筋肉で、それぞれ肩甲骨の烏口突起・関節上結節から起こり、下方に走行して、橈骨粗面に停止します。

前腕の回外に作用する筋肉の中では、この筋肉だけが筋皮神経の支配を受けます。

上腕二頭筋は、肘関節の屈曲筋として知られていますが、前腕の回外にも強力に作用します。

上腕二頭筋には、長頭・短頭でそれぞれ独自の作用を持っていますが、前腕の回外に関してはどちらも作用します。

上腕二頭筋の回外作用は肘関節が屈曲している時に最も強く働きます。

肘関節を伸展している際に回外する力よりも、肘関節を屈曲してから回外する方が、回外筋と上腕二頭筋が強く協調して働くので、回外方向への力は強く働くようになっています。

上腕二頭筋は、前腕の回外の他にも肘関節の屈曲や肩関節屈曲の補助筋としての作用も持っています。

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前腕回外の補助筋

前腕の回外は主に回外筋と上腕二頭筋で行われますが、腕橈骨筋が補助的に作用しています。

腕橈骨筋の起始・停止・支配神経

腕橈骨筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
腕橈骨筋 上腕骨外側顆上稜 橈骨遠位端 橈骨神経 C5 – C6

腕橈骨筋は、上腕骨外側から起こり、下方向に走行して、橈骨遠位端に停止する長い走行を持つ筋肉です。

支配神経は、回外筋と同じく橈骨神経の支配を受けています。

腕橈骨筋は、肘関節を回内位で屈曲させる筋肉で、肘関節の屈曲筋群の1つとしての役割があります。

上腕から前腕の外側部分を走行する筋肉で、前腕が回内位になると、その走行は橈骨と共に移動して、前腕のをクロスするような走行になります。

ここから回外する際に、回外筋や上腕二頭筋の働きをサポートします。

腕橈骨筋は、前腕の表層を走行する筋肉なので、力を入れると前腕の外側部分で収縮する様子が簡単に確認できる筋肉です。

前腕の回外に作用する筋肉のまとめ

前腕の回外運動は、日常生活でも比較的よく行われる運動です。

解剖学的肢位で、肘関節を伸展したまま行うことはほとんどありませんが、肘関節を屈曲した状態での回外運動は頻度が高いです。

  • ドアノブを回す
  • ドライバーを回す
  • 本をめくる

など何気なく行われる動作の中で前腕の回外筋が働いています。

また、テニス肘と呼ばれる上腕骨外側上顆炎では、前腕の回外時に疼痛を誘発されるので、施術の最初や途中で状態を把握するために行なってもらう事もよくあります。

前腕の回外運動の際に働く筋の収縮や、尺骨に対する橈骨の動き方などをイメージしておくと、関節運動の理解が深まるので、しっかりと覚えておきましょう。