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肩関節の外旋に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

肩関節の外旋運動は、肩甲骨に起始を持つ棘下筋や小円筋といった筋肉が作用して行われます。

その他にも三角筋後部繊維が補助的に作用しますが、主な運動は回旋筋腱板を構成する2つの筋肉で行われます。

このページでは、肩関節の外旋に作用する筋肉の種類と、その走行・支配神経から拮抗筋までを詳しく解説したいと思います。

肩関節外旋運動の概要

肩関節は、狭義の意味では肩甲骨と上腕骨で構成される関節です。

肩関節の運動に関わる骨で見ると、肩甲骨と上腕骨以外にも、鎖骨・胸骨・胸郭がその運動に関わっていて、これら全てを含めて、広義の肩関節と呼ばれています。

肩関節は球状の形態をしていて、とても自由度が高い関節です。

肩関節の外旋運動は、肩関節のような形態をもつ関節に特徴的な運動になります。

解剖学的基本肢位では、肩関節は外旋位になっていて、可動域は肩関節の屈曲角度によって異なりますが、最大90°程と言われています。

肩関節外旋に作用する筋肉の一覧

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
棘下筋 肩甲骨棘下窩
棘下筋膜
上腕骨大結節 肩甲上神経 C5 – C6
小円筋 肩甲骨外側縁 上腕骨大結節 腋窩神経 C5 – C6
三角筋後部 肩甲骨
肩甲棘下部外側
上腕骨骨幹部
三角筋粗面
腋窩神経 C5 – C6

肩関節には回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる筋肉が存在していて、回旋系の運動に大きく関与します。

肩関節の外旋運動は、主にローテーターカフの中の棘下筋と小円筋の働きで行われます。

また、これらの筋肉と良く似た走行を持つ筋である三角筋後部繊維が、2つの筋の補助筋として作用します。

肩関節外旋の主動作筋

肩関節外旋の主な動作筋である、棘下筋と小円筋について、さらに詳しく見ていきましょう。

棘下筋の起始・停止・支配神経

棘下筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
棘下筋 肩甲骨棘下窩
棘下筋膜
上腕骨大結節 肩甲上神経 C5 – C6

棘下筋は、その名の通り肩甲棘の下部を走行する筋肉です。

肩甲骨棘下窩や棘下筋膜から広く起こり、外方に向かって走行し、上腕骨大結節に集約して停止します。

肩甲骨の広い範囲を走行する筋肉で、支配神経は肩甲上神経の支配を受けています。

棘下筋は肩甲骨から上腕骨に回り込むような走行を取るため、収縮すると肩関節を外旋させます。

その他にも、棘上筋・肩甲下筋・小円筋といった他のローテータカフと共に、上腕骨を肩甲骨に固定し、臼状の不安定な関節を支持・固定する作用も持っています。

小円筋の起始・停止・支配神経

小円筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
小円筋 肩甲骨外側縁 上腕骨大結節 腋窩神経 C5 – C6

小円筋は、棘下筋の下方を走行する筋肉で、肩甲骨外側縁の下部から起こり、上外方に走行し、上腕骨大結節や骨幹部、肩関節の関節包に停止する筋肉です。

棘下筋と比べると小さい筋肉で、神経支配は腋窩神経の支配を受けています。

棘上筋・棘下筋・肩甲下筋と共に回旋筋腱板を構成する筋肉です。

棘下筋より作用は弱いものの、肩関節の外旋に作用する他、ローテーターカフとして肩関節の支持・固定にも作用します。

また、肩関節外転位からの内転の際にも補助的に働く筋肉でもあります。

肩関節の内転に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

肩関節外旋の補助筋

三角筋後部繊維の起始・停止・支配神経

三角筋後部繊維

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
三角筋後部 肩甲骨
肩甲棘下部外側
上腕骨骨幹部
三角筋粗面
腋窩神経 C5 – C6

三角筋後部繊維は、肩甲骨の肩甲棘下部から起こり、外方に向かって走行し、三角筋粗面に停止する筋肉です。

三角筋は、前部・中部・後部と3つにその大きな繊維を分ける筋肉で、それぞれの部分が異なる作用を持ち、三角筋全体としては肩関節のあらゆる運動に関与します。

支配神経は、全て腋窩神経の支配を受けています。

三角筋後部繊維は、その走行から肩関節外旋に対して補助的に作用します。

その他の作用として、肩関節の伸展や水平外転にも作用する筋肉です。

肩関節の伸展に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

肩関節の外転に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

肩関節外旋の拮抗筋

肩関節内旋筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
肩甲下筋 肩甲骨筋間中隔 上腕骨小結節 肩甲下神経 C5 – C6
大胸筋
鎖骨部
胸肋部
鎖骨
胸骨・肋軟骨
上腕骨結節間溝 外側胸筋神経 C5 – C6

肩関節外旋の拮抗筋として作用するのは、肩関節の内旋の主動作筋である、肩甲下筋や大胸筋です。

肩関節の内旋に働く筋肉は、この他にも広背筋や大円筋などがありますが、ここではこの2つの筋肉を例に挙げておきます。

肩関節内旋筋が過度に緊張していると、肩関節外旋運動の際に拮抗筋が十分に伸張されず、十分な可動域が得られません。

また、安静時でも外旋筋と内旋筋の緊張差が大きいと、肩関節がいずれかの方向に偏って支持されることになります。

肩関節外旋に作用する筋肉のまとめ

肩関節の外旋運動は、棘下筋・小円筋・三角筋後部繊維など身体の背側にある筋肉が主に作用して行われています。

肩関節の内旋・外旋を繰り返しながら、上腕の後面を触れると、肩関節外旋筋の収縮が簡単に確認できます。

外旋運動は、日常生活の細かい運動だけでなく、野球の投球動作などにもよく挙げられるので、内旋運動と合わせて肩関節の働きをイメージしておくと良いでしょう。