東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2018年7月の東京セミナーは殿圧という手技を行いました

今月は殿部の筋肉の左右差を見極め、緊張側の筋肉の弛緩を目的とした「殿圧」という手技です。

人間を効率的に機能させる上で、骨盤(寛骨)と脊柱と下肢(大腿骨)が安定していることが重要です。安定させるためには、骨盤(寛骨)周辺の筋肉が正常に機能していることが必須条件になります。

今回の手技は股関節外旋に機能する筋肉にアプローチする手技を行いました。

殿圧を学ぶ

手技の目的

人間を支える左右の下肢が自由自在に動かせる事が一番理想的な状態です。しかし、偏った使い方により、左右のどちらかがよく可動し、もう一方は動かしずらいという状態になります。

今回は股関節の外旋筋の緊張差を検査で確認し、外旋の主動作筋の中殿筋や深部外旋六筋や補助筋の大殿筋の緊張を緩める手技を行います。

仮に左の中殿筋が緊張している場合、右の中殿筋は左より弛緩状態であることが検査で分かります。

今回の手技で、左の中殿筋を弛緩させることで起始部の寛骨と停止部の大腿骨と関係(ポジション)は変化します。

この変化により反対側の右の中殿筋や寛骨や大腿骨に影響が出ることが分かります。

確認として検査をすればすぐに分かります。

同じ事が、外旋六筋や大殿筋にも言えます。

この手技の目的は、寛骨や大腿骨周辺の筋肉の作用を左右対称にすることです。

しかし、本来の目的は全身の筋骨格を左右対称に機能させることが目的で、骨盤周辺や下肢に症状があるからこの手技を使うわけではありません。

手技の構成

受け手を伏臥位に寝かせ、股関節外旋が優位な側の大殿筋を手掌で軽く押します。

この時、受け手の呼吸が呼気時に押し、数回の呼吸を待ち、呼気で元に戻します。

殿部に手掌を置くポイントとして、中指が受け手の大転子を触れる所で手掌を置くと上手く殿部を押せます。

殿圧を上手く効かせるポイント

外旋優位側が非重心側なら、受け手の大腿骨を単純に内旋させるように押すだけです。

しかし外旋優位側が重心側だった場合、大転子を外上方に押した方が効果が高いです。

これは重心側の大腰筋や腸骨筋が緊張しているため、大転子を外上方にすることで寛骨を上方回旋させて大腰筋や腸骨筋を一緒に弛緩させることができます。

逆に外旋優位側で非重心側を外上方に押すと、大腿骨は内旋させることは出来るが大腰筋や腸骨筋をさらに弛緩させる事で、寛骨と腰椎との関係性が崩れ左右差がより悪化します。

殿圧時のポジションと身体の使い方

上記で述べたように、重心側の時と非重心側の時で押す方向が違うので、最初のポジションにも違いがあります。

下肢全体のセッティングも足関節、膝関節、股関節の関節面が同じ方向を向いていないと殿圧をする上肢の力が分散されます。

膝の屈曲角度と股関節の屈曲角度を合わせ、股関節屈曲をしながら手掌を殿部に置くようにします。この意識が少ないと骨盤が後傾し、身体や頭部は突っ込んだ姿勢になり、殿圧をした時に手押しになってしまいます。

上肢の使い方としては、肩関節は伸展筋を収縮させ、肘関節は屈曲筋を収縮させ、手関節背屈で準備します。

呼気で押し始めたら、3関節を同時に入れ替えます。そうする事で、無駄な力を受け手に与えることもなく、きちんと大腿部を内旋させることができます。

セミナー生の練習をみた感想

今回は全員初めての学ぶ手技だったのですが、練習回数が増えてくるとだんだんコツを掴み、検査の結果が良くなってきていました。

関節の遊ぶを無くし他動運動をする手技に比べ、今回のように筋肉や関節に動きを与え軽い押圧の手技の方が習得しやすいと思います。

人間の関節の中でもかなり大きい関節で、必然的に大きな筋肉がある股関節をコントロールできると臨床の幅も広がります。

比較的簡単で、効果も出しやすい手技なので沢山練習してほしいと思います。

セミナー中に問診の勉強

セミナーの数日前にメールで、交通事故による嗅覚障害で相談したいと問い合わせがありました。たまたま東京からの問い合わせだった事と東京セミナーの前だったので、セミナーの休憩中に問診をさせてもらい、セミナー生にもどんな質問をし、どんな説明をするかを聞いてもらい問診の勉強もしてもらいました。

数年前に書いたブログに交通事故による嗅覚障害の症例があります。

https://www.styleb.co.jp/blog/293/

ご家族がこの症例を読んで問い合わせしてきてくれました。

この症例は他の症例よりもアクセスも多く、そして問い合わせも国内外からあります。

それだけ嗅覚障害で苦しんでいる人が予想以上に多い事も知ることができました。

実際の問診は、この症状に至った経緯や病院の見解や現在の治療内容など聞ける範囲で聞きます。あと嗅覚障害も含め全身の症状、事故後から症状の変化など、事故直後から現時点の全ての症状を聞きます。既往歴やスポーツ歴など施術する上で必要な情報を聞きます。

あと、バランス療法は何をするか?を必ず説明します。説明を受けて患者さんが納得しないなら、施術を受けてもあまり意味がないと思います。

まずはバランス療法はどんな事をして、どんな変化をさせることができるか?この部分を理解し信頼してもらわない限り前には進めないと思います。

予定では30分のつもりが、1時間近く喋ってしまいました。

セミナー生にはなかなか聞く機会がないで、良い勉強になったと思います。

セミナー後記

今回偶然にも嗅覚障害の方が相談に来られました。

嗅覚障害は肩こりや腰痛と違い、痛みや痺れはありません。ただ嗅覚を失っているだけなのです。

病院では一度失った嗅覚は元には戻らないという判断とのことです。実際に切れた臭糸が再び元に戻ることはないんだと思います。

ただバランス療法は、その人の筋肉と骨格を左右対称にし、今可能な限り生理的な機能を最大限に高めることが目的のため、特に症状にとらわれず施術します。

今回の方はどうなるか分かりませんが、これまで2人の方が嗅覚が回復が完全に回復し、1人の方はかなり回復しました。

嗅覚を失うと食事もあまり美味しくありません。人間が生きていく上で食べ物が美味しくないと思って生きていくのはとても辛いことでもあります。

セミナー生やそして手技で仕事をされている方は、決して簡単な症例ではありませんが救える可能性があるという思いだけは持ってほしいと思います。