2017年8月の手技セミナーは坐骨神経系の筋の弛緩を狙った手技をテーマに行いました
2017年8月6日に、大阪上本町で開催した手技セミナーは、坐骨神経系の筋肉の緊張を左右で比較し、緊張した側の筋の弛緩を狙った手技をテーマに行いました。
坐骨神経の支配を受けるハムストリングスは、立位時の重心機能に大きく関与していて、この筋や拮抗筋である大腿四頭筋のバランスを整えることは、安定した身体を獲得するために非常に重要です。
バランス療法は、症状のための施術をする訳ではないとはいえ、腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄症・梨状筋症候群など、坐骨神経が圧迫を受けて、下肢後面に痛みや痺れが出ているケースは非常に多く見られます。
こういった症例では、全身の筋のバランスを整えつつ、直接的に坐骨神経支配の筋にアプローチできると、とても効果的です。
ハムストリングスの緊張を左右で比較する
施術の手技を始める前に、まずは坐骨神経の支配を受けるハムストリングスの状態を知るため、左右で筋機能を調べます。
ハムストリングスの主な作用に膝関節の屈曲があり、筋機能の検査をする場合は、膝関節の屈曲がしやすい側が、ハムストリングスが優位に働き、反対側は相対的に劣位という事が言えます。
バランス療法の筋機能の評価方法では、膝関節を他動的に屈曲し、関節可動域から拮抗筋とのバランス、左右の緊張差を比較します。
その他にも、ハムストリングスの機能を調べる方法は、こちらの記事をご覧ください。
股関節内外旋の左右差をみる
今回の手技は、主に前後方向の筋のバランスを整える手技ですが、手技を効果的に行うために、股関節内外旋の左右差も確認します。
ハムストリングスの緊張側の下肢が、内旋・外旋どちらの筋が優位に働いているかを調べ、下肢に手技を行う際の角度や方向を決めます。
坐骨神経系の筋の弛緩を狙った手技を行う
ハムストリングスの左右の緊張差が判別できたら、緊張側の筋弛緩を狙って手技を行います。
手技の手順としては、まず足関節部から下肢を持ち上げ、前述の検査で股関節外旋筋が緊張傾向にあれば内転位に、内旋筋が緊張傾向にあれば外転位に操作します。
この時の股関節の角度は、股関節周囲の筋にストレスを与えないように、大きく動かしすぎないように注意します。
股関節の外転または内転操作を終えたら、呼吸のタイミングを見ながら、ゆっくりと下肢に牽引を加えていきます。
下腿後面の筋を伸張させる方向に操作する
牽引といっても、身体の抹消方向に引っ張る訳ではありません。
この手技は、あくまでの緊張した坐骨神経系の筋を弛緩させることを目的とした手技です。
そのため、下腿後面の筋であるハムストリングスや下腿三頭筋を伸張させる方向に関節を動かしていきます。
股関節を屈曲方向に、膝関節を伸展方向に、足関節を背屈方向に同時に操作することによって、徐々に下肢後面の筋が伸張され弛緩されていきます。
通常のハムストリングスのストレッチを行っても、ハムストリングスを伸張させることは可能です。
ですが、すでに痛みのある身体にはラセーグ兆候が現れ、脱力下でハムストリングスを伸張させることはできません。
今回の手技は、痛みを全く感じさせずに、完全脱力下で坐骨神経系の筋を同時に伸張させる事が大きなポイントになります。
手技を行ったあとはハムストリングスの状態を再検査
手技を行ったあとは、筋機能がどのように変化したかを再度検査します。
手技を行う前に、膝関節の可動域を検査しているので、全く同じ手順で検査をします。
手技によって、ハムストリングスの緊張が弛緩して、拮抗筋・反対側とのバランスが取れていれば、膝関節の可動域は左右対称になっています。
もしくは、手技の前に行った検査よりも、可動域の差が少なくなっているのが確認できます。
また、再検査の結果が改善していれば、立位で膝が伸びやすくなっていたり、前屈時に痛みが出なくなったりと、坐骨神経痛を誘発する、あらゆる動作で変化が見られます。
今回の手技のまとめ
坐骨神経領域は、痛みが出やすいということもあり、今回の手技は必然的に使用する頻度が高くなります。
とはいえ、最も大きな目的は、左右の下肢の筋の機能を整えることにあります。
坐骨神経系の筋を弛緩させることで症状の改善を狙うというよりも、左右の筋のバランスが整い、下肢・骨盤・腰椎などの骨格を正しい位置で支えられるようにすることで、結果的に症状の改善を狙うということを忘れないようにしましょう。
また、症状の出やすい部分に直接アプローチできるといっても、やはり痛みの出ている部分は、過度に緊張しやすい傾向にあります。
症状が強い身体に行う時は、他の手技で全身の緊張を取ってから、徐々に行うなどの工夫が必要です。