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ハムストリングスの緊張差を左右で比較する簡単な方法

手技療法を行う上で、患者さんの筋の緊張・弛緩といった状態を把握することはとても重要なことです。

対象とする筋肉の左右の緊張差や、拮抗筋と比較した場合の優位性など、施術のヒントになる項目はたくさんあります。

今回は、主要姿勢筋としての働きを始め、股関節の伸展や膝関節の屈曲に働くハムストリングに注目し、その緊張・弛緩の検査方法について考えたいと思います。

ハムストリングスの伸張度から安静時の筋緊張を見極める

ハムストリングスの検査をするには、様々な方法がありますが、ここでは主にハムストリングスを伸張させ、安静時にどれだけ筋の緊張があるかを調べる方法を挙げたいと思います。

ラセーグテストの要領でハムストリングスの緊張を見る

一番わかりやすい方法としては、整形外科的な神経テストとしても有名なラセーグテストの動きで、ハムストリングスの緊張を見る方法です。

ラセーグテストは、術者が他動的に患者の股関節を屈曲させ、神経症状を誘発させるテストですが、ハムストリングスの緊張を見るだけなので、疼痛を誘発する必要はありません。

また、同時にハムストリングスの拮抗筋である大腿四頭筋や股関節屈筋群の出力差も見ることができるので、他動ではなく自動で行います。

やり方はとても簡単で、まず患者さんに背臥位で片側の足関節を背屈してもらいます。

同時に膝関節が屈曲してこない様に、伸展状態をキープする様に指示します。

そして、そのまま股関節を屈曲していってもらって、ハムストリングスが突っ張る所まで上げてもらいます。

術者は足関節の背屈が緩まない様に、膝関節の伸展が緩まない様にチェックしながら、最終可動域まできたら、踵の位置に指を置いて、キープします。

その指を動かさない様に、反対の股関節も同じ様に屈曲していってもらいます。

同じく最終可動域まできたら、自身がキープしている指の高さと見比べてみます。

たったこれだけですが、道具も器具もなくハムストリングスの緊張差を左右で比較することができます。

足が上がらなかった方が、ハムストリングが緊張しており、十分な伸張が得られないと言うことになり、反対によく上がった方は、ハムストリングスの安静時の緊張が弱く、十分な伸張を得られるということになります。

一つの筋肉をテストすることで拮抗筋を考察することもできる

ここで興味深いのは、ハムストリングスの緊張が強く、足が上がらない方は、ほとんどの場合拮抗筋である大腿四頭筋の出力は相対的に弱いということです。

反対に、足が上がる方はハムストリングスの緊張は弱く、大腿四頭筋の緊張が相対的に強いということになります。

この様にある一つの筋肉の緊張差を見ると、その拮抗筋、または対側の同一筋と比較して考えることができます。

さらには、対側の筋肉と拮抗筋のバランスまで考えを巡らせることも可能になります。

これは、患者さんの主訴がハムストリングスにある場合だけでなく、例えば腰痛の患者さんであっても、立位の姿勢がきになる患者さんであっても、下肢の屈筋・伸筋のバランスを考えるヒントになります。

ここから更に考察を加えて、股関節やその周囲の筋肉に与える影響や、骨盤、腰椎という風に考えていくことも可能です。

検査は状態の把握にも改善の確認にも使える

簡単なハムストリングスのテストでしたが、これは筋の緊張差を図ることだけでなく、その筋緊張を把握した後、手技を行い、再び同じテストをして、改善したかどうかの目安に使うこともできます。

緊張していた筋肉が、狙い通りに弛緩したかどうか?関節のアライメントには変化があったが、実際に動かしてみるとどうか?

など、施術の評価に用いることが可能です。

特に下肢に症状のない患者さんでも、試しにテストをしてみると驚くほど左右に差があることがあります。

例えばそれが、腰痛につながっていても全く不思議なことではないので、是非色んな方に試してみてください。

テストはできるだけ同じ手順で行い、施術後の確認の時にもそれが再現できると、とても有用な評価になります。