東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

身体の歪みの定義とは?どうやって体の歪みを分析するか?

最近では身体の歪みという言葉を、テレビや雑誌・インターネットなど様々な場所で目にする様になりました。

また、接骨院や整体院・カイロプラクティック院の様な治療院でも、身体の歪み・骨盤の歪みという文字を目にすることがとても多く感じます。

そういう私も、施術を受けに来られた患者さんには、言葉として便利なのでつい『歪み』という言葉を多く使ってしまいます。

しかし、この歪みという言葉の持つイメージには、人それぞれ若干の違いがある様に感じていて、患者さんとのコミュニケーションはもちろん、治療家同士の会話の中でも、『うまく話が噛み合わない。』といった事が度々起こります。

そこで、ここでは身体の歪みについて、様々な角度から考えて、身体の歪みという言葉がどの様な状態を指すのか、そしてどの様に身体の歪みを捉えていけば良いのか、考えて見たいと思います。

身体の歪みは目に見えるもの?見えないもの?

身体の歪みは、目に見えるものでしょうか?

身体の歪みについて書くきっかけになった一つの出来事として、テレビかSNSか雑誌か失念しましたが、ある整形外科のドクターが、『骨盤は歪まない』という発言をしていたというものがあります。

その内容としては、骨盤は一応複数の骨が連結してはいるが、その関節にはほとんど動く余地がないから。

という様な理由だったと思います。

これは、このドクターだけの発言ではなくて、手技療法家の間でも『骨盤は歪む』という意見と『骨盤は歪まない』という2つの意見を耳にする事から、一般的にはどちらも統一されていないものだなと感じます。

誰が見てもすぐに分かる身体の歪み

身体の歪みという言葉の中には、誰でも一目見て分かるものと、そうでないものとがあります。

例えば、脊柱の側弯症を持った患者さんがいて、その人の身体を見たとき、『この人の身体は歪んでいる』『この人の体は歪んでいない』という議論は起こらないと思います。

側弯症は、実際に椎体が回旋を起こし、脊柱全体で見ても側方に曲がってしまいます。

脊柱側弯症の主な原因には諸説ありますが、これを見る限り何かの条件が整うと、身体が歪むという事は定義できそうです。

側弯症の様な例ではなくても、見た目に分かる身体の歪みというのは実はたくさんあって、全てを例に出すときりがありませんが、良く見かけるのはこんな例ではないでしょうか?

  • 右肩が上がって左肩が下がっている
  • 真っ直ぐ立っても頚が左に傾く
  • 強い猫背で横から見ると顔が前に突き出している
  • 何気なく立つと右足が内側に向いている

これらは日々向き合う患者さんはもちろん、街を歩いていても珍しくないくらい良く見かけます。

むしろ、これらの歪みを持っていない人間の方が余程珍しいのではないでしょうか?

あまりにも皆んなが持ちすぎていて、これでは『歪みはある』『歪みはない』に加えて『歪みはあっても健康に影響するものではない』という新たな意見が出てきても、なんら不思議はありません。

見ただけでは分からない身体の歪みも

目に見える歪みがあることから、健康に影響するかどうかは置いておいて『身体の歪みは存在する』という定義は簡単に出来そうです。

ここから問題になってくるのが、先ほどの骨盤を例に挙げた目には見えない身体の歪みです。

さらに言うと、変形性股関節症で脚長差が出来てしまい、腰椎や骨盤が傾いていると言う様な大きな傾きではありません。

手技療法家が言う歪みとは、左右の上前腸骨棘を触診した時、少し左の方が上方にあり、さらに外方にある。

と言う様な歪みです。

これは、触診すれば実際に分かるのですが、ただ立っているだけでは絶対に分かりませんし、恐らくレントゲンを取っても特に異常と捉えられる事もないでしょう。

しかし、そう言った小さな歪みを見つける治療家からすれば、『これは骨盤の歪みだ』と言うことになります。

これは全身の小さな歪みを見つけようとして、身体に触れないと気づかないことですし、こうした考えを持たずに身体に触れて得られる情報ではありません。

『骨盤は歪む』と言う意見と『骨盤は歪まない』と言う意見があって当然のことの様に思えます。

どうして身体の歪みを見つける必要があるのか?

地球上で生きている人間のほとんどに、大なり小なり歪みがあるのなら、どうしてそれを細かく分析しようとするのでしょうか?

皆が持っているものなら、特別な事は何もなく、放っておいても良いのではないでしょうか?

ここからは、手技療法の1つである、バランス療法の視点から、歪みについて触れていきたいと思います。

骨格の歪みは筋作用の傾向を知る手がかりになる

私たちは、小さい歪みを見つけて、それのみを問題視している訳ではありません。

骨格の小さな歪みから、それらの骨を動かす筋の働きを見ています。

例えば、先ほどの例の様に、左側の上前腸骨棘がやや上方にあり、さらにやや側方にあるとします。

これをヒントに、関節をその様に動かす筋肉の働きを考えるのです。

  • 左の腸骨が上方にあるなら股関節の屈曲筋が優位に働いていないか?
  • 腸骨がやや外方にあるなら股関節を外旋させる筋肉が優位に働いていないか?
  • 左が外方にあるなら右の内旋傾向が強くなっていないか?

この様に、触診した情報からこれらの筋の様子を推察する事が出来ます。

また、それに合わせて関節を実際に動かしてテストする事で、その推察通りに筋が働くかを確認する事が出来ます。

こうして骨格から筋肉の働きを検証していき、その人の身体のバランスを把握する事が出来ます。

どうして歪みを整える必要があるのか?

それは簡単な事で、目の前に来られる患者さんは、現在の筋肉のバランスで生活をしていて、痛みや不調が出たからです。

ほとんどの人が持っている歪みを、全員が治さなければいけない訳ではありません。

その患者さんの訴えを改善するためには、これまでと同じ状態を保っても改善するわけはないので、何か身体の環境を変えてあげる事が必要です。

歪みを見つける事は、その患者さんの過度に緊張している筋肉、またはあまり働いていない筋肉を分析する事が出来ます。

骨格は身体を保護し、支える力がありますが、動く力は持っていません。

動きの全てを筋の働きに任せています。

その筋肉は、習慣的な収縮・弛緩が繰り返され、現在の骨格の位置を作り出しています。

こうして出来た骨格の位置が、歪みとして表れるため、丁寧にその情報を読み取り整えていく必要があると、日々考えています。

実際にこうして分析して得た、筋肉の緊張・弛緩のバランスを、前後的・左右的に整えて、再び関節運動のテストをしてみると、左右の筋肉が同じ様に働き始めます。

左右の筋肉の働きが同じになった状態で、再び骨格の触診をしてみると、左右の位置に大きな差はなくなっている事がほとんどです。

こうして筋のバランスを整え、筋・骨格の環境を整えてあげる事が出来れば、やはり主訴にも変化が出ています。

歪みの定義と分析に関するまとめ

一言に身体の歪みといっても、そこには様々な定義が隠れていると感じます。

バランス療法では、左右の筋の緊張差が作る骨格の位置を歪みと捉えて、日々歪みの検査と施術に取り組んでいます。