東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2018年5月の大阪セミナーは股関節外転・外旋筋を調整する手技をテーマに開催しました

2018年5月13日に大阪上本町で開催した手技セミナーは、下肢を内転・内旋方向に操作することで、股関節の外転・外旋筋を調整する手技をテーマに行いました。

今回のセミナーには、これから鍼灸師・按摩・マッサージ師を目指すという方や、柔道整復師として勤務されている方に見学に来て頂きました。

とても熱心に聞いて頂き、セミナー受講生も大いに刺激を受けたと思います。

長時間ありがとうございました。

股関節外転・外旋筋の状態を調べる

股関節は臼状関節であり、広い可動域を持つため、その働きに関与する筋肉も多くあります。

今回の手技は、その中でも外転・外旋に作用する筋の状態を調べて、緊張した外転・外旋筋を弛緩させる目的で行います。

股関節の外転・外旋に作用する筋肉

 筋肉名 作用
大殿筋 外転
中殿筋 外転
小殿筋 外転
大腿筋膜張筋 外転
深部外旋六筋 外旋
大殿筋 外旋

股関節の外転・外旋に作用する筋肉は、主に上記のような筋肉です。

これらの筋肉の緊張を左右で比較し、緊張している側の下肢に対して手技を行います。

外転・外旋筋の左右差を関節可動域から調べる

筋の緊張を左右で比較する方法は様々ですが、バランス療法では股関節の可動域の違いから、左右の緊張差を調べます。

単一の筋肉をMMTなどで調べても、精密な左右の差はなかなか判断することができません。

股関節を他動的に外転・外旋させることで、その可動域を比較し、可動域が大きい側が外転・外旋筋の緊張側と判断します。

可動域の検査だけでは左右差がわかりにくい場合は、両下肢の外旋角度をみたり、伏臥位で上前腸骨棘の高さを調べたりと、総合的に外転・外旋筋の緊張傾向を調べます。

外転・外旋筋の緊張を弛緩させる手技を行う

股関節の外転・外旋筋の緊張側が判断できたら、緊張側に対して弛緩を狙った手技を行います。

足関節部を持ち内転・内旋方向に操作する

今回の手技は、手順としてはとてもシンプルです。

  • 足関節を持つ
  • 下肢を少し挙上する
  • 内転・内旋方向に動かす
  • 保持する
  • 元の位置に戻す

まず足関節部分を持ち、下肢を捻らないように大腿骨の軸上にまっすぐ挙上します。

そして、呼吸のタイミングを見ながら、徐々に股関節を内転方向に動かします。

この時、股関節の内転と同時に、内旋方向にも操作を加えます。

股関節は、重力によって自然と外旋方向に倒れていく傾向があるので、内転操作中に外旋運動が入らないように注意します。

内転方向への可動域は、身体によって全く異なりますが、骨盤やその他の関節が連動して動いて来ないように、股関節だけを慎重に動かします。

こうして操作すると、ストレッチの様に大きな可動は出ずに、すぐに足関節を持っている手に抵抗を感じます。

そこからは無理に動かさずに、呼吸を見ながら4・5回の呼吸分下肢を保持します。

保持したら、関節を捻らない様に元の位置に戻して手技を終えます。

股関節の関節可動域を再チェックする

手技を終えたら、股関節の可動域を調べて、外転・外旋筋の緊張がどう変化したかを確認します。

手技の狙い通りに、外転・外旋筋が弛緩していれば、内転・内旋筋とのバランスが取れて、手技を行った側の可動域は狭くなります。

反対側の可動域も調べてみて、左右の股関節の可動域が対象になったことを確認できたら、手技の効果が十分に得られているということになります。

股関節外転・外旋筋を弛緩させる手技のまとめ

今回の手技は、内転・内旋操作によって、緊張した外転・外旋筋の弛緩を狙った手技でした。

股関節の運動に関与する筋肉は、大きな運動作用を持つ筋肉であると同時に、股関節や骨盤の位置にも強く影響する筋肉です。

この筋肉に強い左右差があれば、当然股関節だけでなく、骨盤の位置にも影響を与えます。

最初の検査でしっかりと左右差を把握することも大切ですし、立位姿勢や歩き方などから、股関節の運動の傾向を見ることも、良いヒントになります。

うまく筋が弛緩すると、股関節の可動域に変化が起こるだけでなく、立位姿勢の維持や歩行などの動作にも変化がみられるので、確認して見ると良いでしょう。