東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2018年11月の大阪セミナーは肩甲挙筋の緊張を調整する手技を行いました

2018年11月11日の大阪セミナーは、肩甲挙筋の調整という手技を行いました。

今回の手技は、肩甲挙筋の緊張を左右で比較し、緊張側の肩甲挙筋に刺激を与えて、緊張を緩めることで、左右のバランスを調整する手技です。

セミナーでは、肩甲挙筋の緊張を左右で比較する検査方法と、緊張側に対して行う手技、そして手技を終えた後に、筋のバランスがどのように変化したかを確認する方法を学びました。

今回のセミナーは、柔道整復師の方が1名見学にされ、前回に続き歯科医師の方に参加して頂き、いつもより少ない人数ではありましたが、実りのあるセミナーになりました。

肩甲挙筋の緊張を左右で比較する

バランス療法では、手技の前に、必ず肩・膝・股関節の可動域を検査し、関節の動きから筋機能の左右差を確認します。

ほとんどの手技は、この3つの検査をもとに行いますが、肩甲挙筋の緊張側を判別するためには、別の方法を用います。

肩甲骨の位置や頚部の可動域で比較する

肩甲挙筋の緊張側を判別するために、バランス療法で用いるのは、主に以下のような検査です。

  • 胸椎と肩甲骨上角の距離
  • 肩甲骨下角の位置
  • 頚部の回旋
  • 頚部の側屈

これらの項目を左右で比較していくと、肩甲骨の位置の差、頚部の可動域差から、肩甲挙筋の緊張側が見えてきます。

詳しくは、過去に投稿したこちらの記事も参考にしてください。

肩甲骨の位置の左右差から関連する筋肉のバランスを分析する方法

今回のセミナーで初めて肩甲挙筋の調整を学ぶ受講生は、これらの検査項目を手技の前後で比較しますが、2回目以降の受講生は、同時に肩関節や膝関節の検査も行い、手技が局所的な変化ではなく、全身的に筋のバランスに変化を生んでいるかを確認します。

緊張した肩甲挙筋に手技を行う

検査でどちらの肩甲挙筋が緊張しているかを判断することができたら、今度はその緊張の弛緩を狙って手技を行います。

バランス療法のセミナーでは、肩甲挙筋にアプローチする手技が複数ありますが、今回のセミナーでは、仰臥位で行う手法を学びます。

肩甲挙筋の手技の手順は以下のようになります。

  • 術者は手技を行う側に正座する
  • 受け手の肘を伸ばして把持する
  • 呼吸を見ながら肩甲骨上角を固定する
  • 筋を弾くように刺激を与える

緊張側を見極めて、呼吸のタイミングを合わせて肩甲挙筋の付着部である、肩甲骨上角を固定するだけでも良いのですが、慣れてきたら筋をコリっと弾くようにして、調整します。

最初はこの感覚がつかめず苦労する受講生もいますが、触れることに慣れてくれば、比較的簡単に筋を捉えることができます。

指の力を入れすぎないように注意する

筋を固定して、弾くとなると、思わず指先に力が入ってしまうことが多いですが、この手技も他の手技と同じく、刺激は出来るだけソフトに行います。

また、狙っているのはあくまでも上角の上内側を走行する筋肉だけで、余計な部分には極力刺激を入れないように注意します。

強い力で複数回抑えていると、受け手の身体はどんどん緊張してくるので、必要最小限で行うようにしましょう。

術者は前のめりにならないようにする

肩甲挙筋の調整に限ったことではないですが、術者は手技を行う際に、視野を広くもち、姿勢が前のめりにならないようにしましょう。

自分の重心が前方に傾き、不安定になると自然と手には余計な力が入って力んでしまいます。

必然的に手技を行う圧も強くなっていくので、常に重心を中心に保つように注意しましょう。

細かいポイントですが、受け手と術者の距離が近くなる手技なので、前のめりになると受け手はさらに圧迫感を感じます。

頚部の周囲という繊細な部分を触るため、触り方や受け手との距離感など、可能な限り緊張感を与えないように工夫しましょう。

手技を行なったあとは再び検査を行う

緊張した肩甲挙筋に対して、固定または筋を弾く刺激を入れたあとは、その結果筋肉のバランスがどのように変化したかを確認します。

基本的には最初と同じように検査を行いますが、良い変化が起こると以下のようなことが確認できます。

  • 胸椎から上角の距離が均等
  • 下角の位置が左右対称
  • 頚の回旋可動域が左右均等
  • 頚の側屈可動域が左右均等

このような変化が起これば、ほぼ狙い通りに緊張した肩甲挙筋を弛緩させることができ、筋機能が左右対称に整っているということが言えるでしょう。

また、最初に肩関節や膝関節の検査も確認していた場合は、離れた部分の筋機能にも変化が及んでいるかを確認しましょう。

肩甲挙筋のチェック項目で全て左右差が無くなっていれば、ほぼ肩や膝などの筋が左右対称に機能していることを確認できると思います。

肩甲挙筋を調整する手技のまとめ

肩甲挙筋を調整する手技は、手技を行う部分に関連が深い例でいうと、頚部の回旋制限や寝違えには分かりやすく変化が現れる手技です。

こういった症状を持った身体に対して積極的に使用するのはもちろん良いのですが、本質的には筋機能のバランスを整え、肩甲骨や頚椎を正しく保持し、回旋や側屈などの運動がスムーズに行えるという機能を整えるために行います。

主訴は受け止めつつ、肩甲挙筋から全身を整える手技の1つであるという認識で手技を使っていきましょう。