東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2018年4月の東京セミナーはハムストリングスの緊張を弛緩させる手技を行いました

腰痛や膝痛の患者さんを確認すると、症状のある側のハムストリングスは反対側より緊張していることが多々あります。

この緊張したハムストリングスを弛緩させ、膝の屈曲運動を左右同じように機能させると腰痛や膝痛の症状は大幅に改善します。

今月は、このハムストリングスを弛緩させる下肢の牽引(仰臥位)をみんなで練習しました。

施術の流れ

臨床では、検査、手技、再検査となります。

検査

この手技を行うために、膝関節と股関節2種類の検査が必要となります。特に膝関節の検査が重要になります。

まず膝関節検査でどちらの膝が屈曲しやすいかを確認します。

左右を比べてどちらかの膝がよく曲がる側がハムストリングスが緊張し、脛骨神経が優位に機能しているということが言えます。

立っていても膝が曲がりやすいため、反対側と比べ重心を長時間かけ難く、非重心側になる場合が多くあります。

次に膝が屈曲しやすかった側の股関節は、内外転しやすいかを確認します。

外転しやすかったら内転して牽引、内転しやすかったら外転して牽引となります。

手技

手技の流れは、以下のようになります。

1、牽引する下肢に対して、ハムストリングスに筋収縮を与えないように下肢を屈曲する。動作は呼気で動かす。

屈曲の高さは個人差があります。腰椎椎間板ヘルニアなど下肢に痺れや疼痛がある場合は、5センチに以下の場合もあります。特に症状がない場合でも、10センチ前後くらいで極端に高くあげません。

2、呼気で内転又は外転する。

これも可動域に個人差があるため、決まった角度などありません。術者の手に伝わる感覚で、これ以上外転すると受け手の下肢が筋収縮を起こすと感じる手前まで操作します。この時下肢を内外旋しないように操作した方が、牽引時ハムストリングスにしっかり伸長作用を与えることが出来ます。

3、内果とアキレス腱の間を呼気で、足関節前面を吸気で固定する。

内果とアキレス腱の間は、操作している手指の第345指の指腹と反対側の手掌部で固定します。足関節の前面の固定は、両母指の指腹で固定します。

4、呼気で下肢を牽引します。

この手技の一番のポイントとなる操作です。下肢全体を牽引するのではなく、股関節の屈曲角度を保ちつつ、膝を伸展させ、足関節を背屈させることでハムストリングスを伸長させることが出来ます。よくあるミスは下肢を引っ張ってしまい、股関節に痛みを出してしまったりすることや、足関節を握りしめて受け手が痛みを感じることです。正しく牽引できていると、受け手はハムストリングス全体が伸長されていることが分かります。牽引の方向や角度にズレが生じると、思った結果を出すことは出来ません。

5、呼気で下肢の牽引を止め、内果とアキレス腱の間の固定も同時に離します。

6、次の吸気時に母指の固定を離します。

7、呼気で、下肢を内転又は外転し伸展して元に戻します。

受け手の足を完全に戻すまでが手技です。戻す時を雑にすれば関節を捻ってしまい、下肢に緊張感を与え、思い通りの結果にはなりません。

再検査

はじめに検査した状態とどのように変化したのか確認する必要があります。

今回の手技に直接関係ない肩関節検査も、手技を行なったことで左右対称性の運動機能になっていなくてはいけません。よって最初の検査時では、この手技とは直接関係ない肩関節検査も必ず確認する必要があります。

手技の身体の使い方

バランス療法の手技には様々な形や動きがあります。

術者が片手で受け手の手足を持つ場合や、術者が両手で受け手の手足を持つ場合があります。

今回の手技は、術者の両手で受け手の足関節を包み込む形になるので、術者の両手が一箇所に集まる形は術者の身体の使い方が少し難しくなります。

牽引をするまでの動きは片手で行いますが、牽引時は両手でしか出来ません。

今回はこの牽引時の術者の動きの解説をします。

牽引時の術者の両上肢の使い方

この説明では、受け手の右下肢を牽引する場合とし、股関節屈曲、内転or外転の操作まで終了し最後の牽引からとします。

牽引前の時点までは左のみで操作をし、内転or外転終了時は、肩伸展、肘屈曲、手背屈です。

ここで、牽引をするために右手を受け手の足関節に合わせます。

この時の右は、肩屈曲、肘伸展、手掌屈になります。

ここまでセッティングが出来てから牽引となります。

これまでは左手で動かしていましたが、牽引時のみ右手がメインで動かします。

受け手が呼気時に、左右の3関節を入れ替えるように牽引します。

右、肩伸展、肘屈曲、手背屈。左、肩屈曲、肘伸展、手掌屈。

この動きが無駄なくスムーズに移行できれば、受け手の下肢を捻らずに足関節を背屈させつつ、ハムストリングスを伸長させることができます。

この動きを身につけることは、数回練習したぐらいでは難しいです。失敗しながら何度も練習を積み重ねてやっと身につく手技の一つだと思います。

研修後期

今月は皆さん最初のフォームを覚える時点からかなり苦労していました。ベーシックコースの中でも一番難しい手技だったので仕方ありません。あとは練習し、また次回の下肢の牽引の時には今回より質の高い練習ができればと思います。

今回の仰臥位での下肢の牽引は、私にとって思い出のある手技です。

これまで何人も腰椎椎間板ヘルニアの患者さんのオペを回避でき、普段通りの生活に戻ってもらえたのも、この手技があってこそと言っても過言ではありません。

セミナー生はもちろんですが、坐骨神経痛やヘルニアの症状の改善に困っている治療師に是非身につけて欲しい技術です。

興味がある方は、お気軽にセミナー見学に申し込み下さい。