2016年10月のセミナーは僧帽筋中部の調整をテーマに行いました
2016年10月16日に大阪上本町で開催したセミナーは、僧帽筋の調整を行いました。
僧帽筋は、頭部から頚・背部に渡って付着し、頭・頚部を支え肩甲骨の運動に関与する筋肉です。
手技療法家にとっても、頭頚部のトラブルに関わる重要な筋肉となるので、この周囲の症状に対してはもちろん、肩甲帯のバランスや、肩関節の働きを考える上でも無視できない筋肉になります。
僧帽筋中部の緊張を左右で比較し有意差を見る
手技に入る前に、必ず行うのが、僧帽筋はどのような状態にあるのかを把握することです。
僧帽筋の緊張差は、特に利き手が緊張するとも限らず、あくまで個々によって判断することが重要です。
肩こりや、痛みがある側が必ずしも僧帽筋が緊張しているとは言えないので、しっかりと関連する関節の動きを見て、どちらが優位に働いているかを確認する必要があります。
僧帽筋の緊張差を見るために、肩関節の屈曲運動検査を行い、屈曲運動の優位差から肩甲骨の働きを考え、僧帽筋の緊張差を捉えます。
僧帽筋は上・中・下部と走行が分かれており、それぞれに主となる働きも異なります。
僧帽筋上部にアプローチする場合は、肩関節の検査の他にも頚部の回旋や側屈運動を左右で比較する検査も行いますが、今回は主に僧帽筋中部にアプローチするため、検査は省略します。
僧帽筋中部の緊張に左右差が生まれると?
僧帽筋中部繊維の主な働きは、肩甲骨を後退させることにあります。
片側の肩甲骨が後退する方向に引っ張られると、胸郭には回旋力が加わります。
僧帽筋緊張側の肩は外に開きやすくなり、反対側の僧帽筋は相対的に弛緩するため、肩は内旋方向に向かいます。
肩甲骨のアンバランスは、肩関節の運動はもちろん、呼吸運動や姿勢保持、立位のアライメントにも大きな影響を与えます。
僧帽筋中部の緊張差を見極めたら弛緩を目的に手技を行う
筋肉の緊張差を見極めることができれば、今度はその左右のバランスを整えることを考えます。
筋肉の緊張差を整えるには、緊張した側の弛緩を促すか、弛緩した方の緊張を促すか?と2つの選択肢がありますが、今回の手技では僧帽筋の弛緩を狙い、左右の筋肉のバランスを整えます。
緊張側の僧帽筋を弛緩させることにより、肩甲骨の後方に引っ張る力を抑制することができ、そうすることで対側の肩甲骨が前方に向かう力を抑えることもできます。
そうすることで、肩甲骨の位置が左右で均等になり、頭・頚部の運動や、肩関節の運動、立位アライメントの改善など、副次的な変化が期待できます。
僧帽筋中部の手技のポイント
僧帽筋は大きな筋肉ではありますが、一部を副神経の支配を受けていることもあり、外部からの刺激に過敏な筋肉でもあります。
よく肩こりの原因などに挙げられることを考えると、精神的な緊張の影響をもっとも受けやすい筋肉であると考えることができます。
緊張しやすい筋肉を弛緩させるためには、受けてに緊張感を与えず、慎重に手技を行う必要があります。
また、この手技は腹臥位で行うため、肩甲骨内側縁と胸椎棘突起のわずかな間でしか、僧帽筋にアプローチすることができません。
その中で、目的の筋肉を狙って弛緩させるようなソフトな刺激を与えるには、術者の手の設置の仕方、余計な力の入らないポジションなど、複数の項目に注意を払いながら手技を行います。
受け手が力が抜けた状態で、術者がうまく僧帽筋に刺激を与えることができれば、呼吸の度に筋の緊張が弛緩していく様子を手に感じることができます。
そのあと、肩関節の運動から左右の差の改善をチェックしても良いですし、立位や頚部の回旋など、変化を見てみると良いでしょう。