2026年4月のセミナー – 求心側のターニング
\ 2026年東京・大阪 /
手技セミナーの無料体験受付中
今月の手技は、肩関節のターニング(求心側)です。
肩関節検査で、屈曲可動域が少ない側を吸気で挙上させ、呼気で元に戻すというシンプルな手技です。
求心側のターニングのルール
- 肩関節検査の短い側にかける
- 吸気で肩関節を屈曲させ呼気で元に戻す
術者の体の使い方
バランス療法の手技は、受け手の体をどのように操作するかだけではなく、術者の体の使い方を重要視しています。
特に昨年から取り入れた、F-LAPという独自の概念を用いて手技の解説をしています。
- Front : (左右の肩峰が一直線の状態)
- Line : ライン (矢状面の基準)
- Area : エリア (前額面の基準)
- Position : ポジション (空間に対する高さの基準)
下半身と体幹のセッティング
この手技では術者は膝を開いて正座をします。
その際自分の両膝が左右のLine 3にあるようにします。
ポジションが決まったら、膝立ちするようにして上半身を持ち上げ、Frontをキープしたまま体幹を屈曲位にし、患者の上の空間に入っていきます。
この時のポイントは、左右の上肢を完全に脱力させることです。
上肢が重力に対して自然な位置にあり、屈曲方向にも伸展方向にも動かさない様にします。
上肢を動かさずにFrontだけが移動することになるので、左右上肢が完全に脱力していれば地面に対して垂直な位置になるはずです。
見た目では肩関節が屈曲している様に見えますが、体幹が屈曲したからそう見えるだけで、肩関節屈曲筋の収縮が一切起こっていない状況を作ります。
このセッティングがターニング操法の1つ目の大切なポイントです。
上肢のセッティング
下半身と体幹のセッティングを終えて、上肢のセッティングに入ります。
受け手は仰臥位で両手を胸部に置いて、リラックスしている状態でスタートします。
胸の上に手を置いた状態は手関節が掌屈位になっているので、手関節をニュートラルに戻す必要があります。
この時、初めて術者の肩関節を屈曲し、患者の手背部を触りに行きます。
この時のポイントもF-LAPです。
受け手に近づいたFrontを可能な限りキープしつつ、手技を行う側の肩関節を屈曲させます。
この時、出来るだけArea 1で患者の手掌に触れるようにします。
※ 術者の身長や患者の体格により難しいケースもあります
Frontをスタートのポジションとし、Area 1,2と大きくなるにつれて、術者の上肢は遠心に移動することになります。
Frontに近いほど中心位での操作となり、手の力を使わずに手技がかけられますが、患者の手関節をArea 2で拾ってしまうとグリップが強くなり、思うように手技の操作ができなくなります。
ハイトポジションは、患者の手掌のハイトポジションをLow (低位)からHigh (高位)にします。
正中線上を0としたラインは以下のようになります。
- Line 2 : 術者の手・肩関節 → 患者の手・肩関節
- Line 3 : 術者の肘・膝関節 → 患者の肘・膝関節
術者と患者の関節を同一線上に揃えることで、少ない力で安定した手技の操作が行えるようになります。
グリップは弱くフィットはしっかり握る

バランス療法の手技は、受け手が脱力した完全な他動運動が基本です。
術者の身体の使い方にルールを定め、下半身→体幹→上肢の順にセッティングするのは、全て受け手に緊張を与えず優しい力で操作するためです。
患者に触れる時は、意識的に手の力を使わないようにします。
そのため、今回の手技でも操作する側の上肢帯の筋を使い、出来るだけ前腕から指先までの筋機能を使わないようにします。
- 大胸筋
- 広背筋
- 三角筋
- 上腕二頭筋
- 上腕三頭筋
など、大きな筋肉で上肢の運動を行います。
また、Frontをキープするための僧帽筋や、骨盤周辺・下肢の筋肉は全体の安定のために常に左右対称に機能させます。
肩関節挙上操作の軌道と呼吸 (吸気時)
ポジションを決め、術者が安定した状態で患者の手関節を把持できたら、患者の上肢を吸気で挙上していきます。
動かし方は、天井方向に持ち上げ可動域まで来たら、そのまま床の方に下ろします。
元々求心性に機能している側なので、コンパクトな動きではなく遠心方向に動かす意識が大切です。
この際、患者側・術者側の各ラインは以下のように移行するようにイメージします。
この手技は患者側・術者側が全く同じLine を使います。
- 手関節 : Line 2 → Line 1へ (手指がLine 0にかかるギリギリ)
- 肘関節 : Line 3 → Line 2へ
- 肩関節 : Line 2のまま
術者は自分の腕の力だけで患者の上肢をコントロールしようとせず、Frontを保ったまま、全身の力を使って手技を行います。
上肢の挙上を繰り返して行いますが、術者の手掌部はArea 1をキープしたままで操作をします。
患者の肘は動作時から完全伸展する直前まで操作し、肘関節の屈曲角度が僅かに残る様にします。
肩関節を戻す操作 (呼気時)
患者の肩関節を屈曲位から戻す際、先に肘を屈曲方向に操作して肘から戻す様にします。
戻す時もFrontで動かし、術者の上肢の筋力を可能な限り使わないようにします。
手技のスタート時のLineに合わせて戻します。
手技の注意点
術者の肘は、完全伸展位から少し屈曲した角度を保ち、操作の開始から終わりまで、その関節角度を保つことがこの手技の注意点です。
求心側のターニングの目的

求心側のターニングは、肩関節検査で可動域を比較し、屈曲可動域の少ない側にかける手技です。
肩関節検査で屈曲可動域が大きい側と比較すると、正中に・中心に引き込もうとする機能が過剰に働き過ぎていると捉えることができます。
屈曲可動域が少ないということは、対側と比較してゼロを超えてマイナスまで、過内転・過伸展しやすくなっているということです。
その肩関節に対して、肩・肘・手3関節の連動性を崩さずに、他動的に操作することで肩関節を本来在るべきポジションに誘導するのが、この手技のアプローチです。
その影響は、同側の上肢及び肩甲帯はもちろんですが、対側の上肢及び肩甲帯に大きく影響を与えます。
左右の肩甲帯が矢状面、前額面、水平面に対して本来の在るべきポジションにある時は、確実に頭蓋骨及び脊柱も在るべきポジションになり、その変化が骨盤や下肢といった全身へと影響を与えます。
関節から骨を話の軸にしましたが、実際には骨だけではなく、骨を動かす筋肉、そして筋肉を支配する神経(脊髄神経)の3つが偏った機能になると、身体の解剖構造的にも生理機能的にも異常を引き起こし、不調や疾患となります。
これがバランス療法の考え方です。
その偏った機能を確認する方法が検査であり、他動運動検査の結果を重要視する意味がここにあります。
解剖生理的に本来の状態、在るべき姿、に戻すために検査を元にした手技を行う。
ただそれだけが手技をする目的であり、決して手技を受けて『気持ち良い』など物理的な刺激で癒すための手技ではありません。
ただ、本来の機能を取り戻した身体は、結果的に居心地がよく、一時の物理的な気持ちよさでは得られない、心地良さや軽快感が得られます。
特定の症状に対してのターニング
バランス療法では、今回のターニングに限らず、基本的に患側に手技をかけることは少ないです。
肩関節の症状というと、五十肩などの肩関節周囲炎が代表的ですが、これらの症状に対しても同じで、ターニングの様な直接的な手技はあまり向いていません。
肩に強い痛みがあると、そもそも肩関節検査ができないので、その際は下肢の手技を中心に組み立て、全身の機能を整えるという目的に終始してください。
肩関節周囲炎の場合、下記の変化を感じたら、少しずつターニングを使ってください。
- 睡眠時の夜間痛が減る
- 自動運動の関節可動域が増した
この2つの変化を確認できたら、肩の関節可動域を広げるように慎重に手技をかけてください。
逆に下肢に症状があり、下肢の手技がかけられない場合も多々あります。
その場合は今回のターニングの様な手技はとてもおすすめです。
- 下肢の脱力ができない人
- 坐骨神経痛で仰臥位が辛い人
- 仰臥位が辛い妊婦さん
などには特に使いやすく効果的です。
先ほどあげたケースは、仰臥位で寝かせても症状が腰や足の痛みで辛い場合が多いので、両膝を曲げてもらい手技をかけてください。
手技の効きが良ければ、その後膝を伸ばしても症状が出ないと思います。
あとは呼吸器系の疾患(風邪ではないのに咳が止まらない)、消化器系疾患などにもよく使います。
テニス、ゴルフ、野球などスポーツを過度にやり過ぎたり、パフォーマンスが低下した時にも元に戻す意味ではとても有効な手技です。
求心側のターニングのまとめ

求心側のターニングは、バランス療法の手技の中で、基本の動きが詰まった手技です。
上肢の挙上、そしてそれを戻すという単純な動きの繰り返しですが、手技として成立させようとすると、術者の身体の使い方、呼吸、操作の軌道など様々なポイントに注意する必要があります。
反対に、動きのルールが明確にあるので、練習すれば確実に効果が出せるようになり、再現できるということでもあります。
Line・Area・Positionを1つ1つ確認し、習得できるように練習しましょう。
