東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2026年9月のセミナーBasicコース – 下肢の内転操法

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今月のセミナーは下肢の内転操法をテーマに開始しました。

下肢の内転は、股関節外転・外旋筋の弛緩を狙う手技で、拮抗筋である内転筋、反対側の股関節とのバランスを整える目的で行う手技です。

手技の実習に入る前に

今回は受講生の質問から、股関節の正常な稼働範囲についてや、バレエなどでより大きな関節の可動が必要な場合、腰椎ヘルニアの症例など、手技の実習前に様々なお話をしました。

股関節の正常な可動域について

  • 屈曲 : 90度
  • 外転 : 45度
  • 内転 : 20度
  • 外旋 : 45度
  • 内旋 : 45度

今回の内転操法にも、股関節の可動域のイメージは必要ですが、今回はバレエをしている受講生から、Y字バランスなど通常より大きな可動域が必要な場合について質問がありました。

個人差はありますが、股関節の通常の可動域は上記の通りの角度なので、大きな可動域が必要な動きの場合は、基本的な関節の可動域に加えて、反対側の下肢の角度、骨盤の動き、腰椎の動きなど他の関節が複合的に可動し、目的の可動域を作り出しています。

特殊な動作の場合は、1つの関節の動きを大きく捉えてしまいがちですし、こうした動作をしている患者さんに施術をする場合も、関節が柔らかいという先入観を持ってしまうかもしれませんが、人間の基本の関節の構造をイメージし、正しく関節の操作を行うという意識が大切です。

また身体が柔らかい=健康という訳ではなく、反対に関節が身体の中心軸から外れて不安定になるというケースがあるということも忘れてはいけません。

今回の内転という手技は、まさに外旋方向に大きすぎる股関節の可動を整え、本来の関節の安定した位置や動きに戻すための手技ということになります。

股関節外旋筋と腰椎ヘルニアの症例について

今回は股関節外旋筋の緊張を整えるということで、深層外旋六筋についてお話しし、その中で梨状筋が坐骨神経の圧迫に関係するという流れから、関連して腰椎ヘルニアの症例について紹介しました。

バランス療法の手技は全体を整える手技ですが、腰椎ヘルニアなどの下肢の症状の場合、特に今回の内転操法のような下肢の手技はポイントになります。

症例で紹介した腰椎ヘルニアの患者さんの場合、現在来院してから3ヶ月ほど経過していますが、かなり症状が落ち着いてきました。

セミナーでは、施術の手技だけでなく、身体の使い方も詳しく伝えていますが、痛みが強い患者さんの場合は、日常生活動作の改善やウォーキングなどの運動指導よりも、まずは施術をして筋骨格系を整えた状態で安定させ、まず本来の快適に動ける身体に戻していくことが大切です。

その上で、再発防止のための日常生活動作や運動のアドバイスをしてあげるというトータルで考えた施術の流れを説明しました。

筋肉の起始停止と中心軸について

関節可動域から、年齢に伴う可動域の変化、プロのアスリートでもやはり年齢によって可動域が落ちていく、そうして身体のアライメントも変化していきます。

臨床においても、高齢の患者さんでは身体の中心軸から四肢の軸が離れていくということが多く見られます。

特に膝関節の変形や股関節の外旋によって、中心軸から下肢が遠心性に作用してしまうことが多く、中心軸から離れていくことで歩行を始めとしたあらゆる動作が不安定になり、痛みや転倒のリスクなど様々な問題を引き起こしてしまいます。

筋肉は、原則として身体の中心に近い位置から起こり、遠い方に停止します。

今回の内転では、こういったケースでは特に使ってあげる必要があり、左右差をとるというよりも、外転・外旋方向に軸が崩れてしまった下肢を中心軸に戻すという意識で行います。

下肢の内転操法について

股関節検査で確認した左右差をもとに、外転・外旋方向へ偏った下肢を中心軸へ近づけ、骨盤と股関節周囲の筋肉のバランスを整えるために行う手技です。

股関節を内転させる内転筋群は、主に閉鎖神経の支配を受けています。一方、外転に作用する中殿筋・小殿筋は上殿神経、外旋にも関わる大殿筋は下殿神経の支配を受けます。

下肢の内転操法では、内転方向への操作によって、拮抗する外転・外旋筋の過度な緊張を整えていくという考え方で手技を行います。

手技に必要な検査

  • 股関節検査
  • 膝関節検査

この手技に必要な検査は2つです。

手技をかける側の下肢は、股関節の内旋・外旋の左右差を比較する股関節で決定します。

膝関節検査に関しては、内転操作を行う際の股関節屈曲の高さを決めるために必要です。

ただし今回のセミナー冒頭でお話しした、極端に中心軸から股関節が外れているケースでは両下肢に内転を行うということがあります。

その場合、股関節検査の柔らかい側には内転と内旋、硬い側には内転のみというように若干左右差をつけて、両下肢とも中心軸に向かって操作します。

呼吸と操作の可動域

足関節部を把持し、患者さんの呼気に合わせて下肢を持ち上げます。続く内転操作も呼気に合わせて行い、内転角度に応じて自然な内旋操作を加えます。

呼気では身体の緊張が抜けやすくなるため、そのタイミングを利用することで、股関節外旋筋の緊張を整えることができます。

抵抗が現れる角度まで内転したら、少しだけ高さを変えてより深い可動域を探します。

ここはストレッチの様に無理に関節を動かしたり、筋肉を伸張させる訳ではなく、術者の手の力を使わずに、抵抗なく動かせる関節の可動域を探るという、とても精密な操作になります。

術者のポジションが崩れていたり、手だけで操作しようと余計な力が入っていると見つけることができません。

術者の身体の使い方やライン取りについて

今回の下肢の内転も、F-LAPの考えを取り入れて、術者の身体の使い方と、操作する下肢に対してどのようなラインで操作をするかということをお伝えしました。

手技に入る前にポジションを確認する

股関節の内転可動域は決して大きくないのですが、術者は股関節を内転位に操作したときに、自分の中心に下肢が位置するようにポジションをとる必要があります。

そのため、ただ何となく座ってポジションをとるのではなく、患者の下肢の内転位置を予測して、事前にその位置に座れるようにします。

最初から下肢の中心に対して術者の正中を合わせてしまうと、そこから内転操作への操作と移動が難しくなります。

ポジションをとる時点で、下肢の内転方向に座り、内転操作をしたときに術者の正中と受け手の下肢がぴったりと揃うようなポジションに入ります。

フロントを崩さずに下肢を保持しにいく

バランス療法の手技では、これまで術者の四肢の動かした方に着目し、四肢3関節の連動を使って手技や検査を行ってきました。

F-LAPの考え方を取り入れてからは、特に上肢の動きは最小限にし、両肩峰を結んだFrontを保ったまま、全身の力を使って操作するという方法に切り替えています。

今回の下肢の内転操法でも、F-LAPを使い、仰臥位の受け手の下肢を保持する際に、Frontを保ったまま近づけていくことで手の力を使うことなく、下肢を挙上させることができます。

この時、少しでも上肢だけで操作しようとすると、左右の肩峰を結んだFrontが崩れてしまいます。

また、Frontを崩さずに意識していても、下肢を取りに行く肩関節に内旋などが入ってしまうと、Frontの平行も崩れてしまうので、注意が必要です。

今回は、肩関節がFrontを保ったまま動かした時と、肩関節や前腕に回旋が入ってしまい、Frontが崩れた時の安定感と不安定感を実感するためのテストも行いました。

下肢と術者の中心を保つためのライン取り

Frontを保つ意識ができると、いよいよ下肢を挙上していきます。

Frontをキープして、上肢の動きは以下のラインを通ります。

  • 肩・肘・手を2・3・2のラインでスタート
  • Frontを倒していく
  • 下肢を持ったらFrontを起こす
  • 肩・肘・手は2・2・1のラインになる
  • 術者の正中に下肢を移動する

ここまでで全身の力で下肢を挙上し、術者の正中と下肢の中心が一直線になった状態になります。

中心を崩さずに内転方向に移動する

最初の手順で軸を合わせたら、その関係性を崩さないように内転方向に移動していきます。

可動域を探りながら、0.5戻してポジションを0.5ずらしてみる→正中(0)に戻すという動作を繰り返して、常に中心を保ったまま安定した状態で内転可動域を探っていきます。

股関節の内転可動域は20度程度なので、そこまで大きな可動域を出す必要はないですが、外転・外旋筋への伸張刺激を意識しながら内転をかけていきます。

最終可動域付近では、股関節の屈曲角度で高さの変化を出すことで、より深く内転操作ができる角度を探っていきます。

この時、F-LAPを意識せず手の力で操作をしようとすると、すぐに可動域をオーバーしてしまい、骨盤や周囲の筋肉などに不必要な刺激が入ってしまうので、手の力を抜いて、微妙な抵抗感を感じられるように、全身を使って手技を行うことが大切です。

臨床での使い所

セミナーで冒頭でお話しした通り、腰椎ヘルニアや坐骨神経痛には、痛みに注意しながらかけると、とても有効な手技になります。

ただし、症状名だけで手技を決めるのではなく、あくまでもその人の身体を本来のバランスに整える目的で行います。

下肢の内転操法は、動きの少ない手技なので、緊張感の強い身体に対してとても有効な手技です。

手技によってうまく受け手の力が抜けると、リラックスして呼吸が深くなり、自律が整うことも確認できます。

とてもよく使う手技なので、F-LAPを意識して繰り返し練習しましょう。

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