2026年7月のセミナーBasicコース – 座位のエルボーと肩甲挙筋からの調整
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今回のBasicコースでは、座位で行う上肢の手技「エルボー」と「肩甲挙筋」という手技を学びました。
手技の前に臨床的な考え方
バランス療法の手技は、ほとんどが仰臥位か伏臥位で行うものですが、今回の手技のように他の肢位で行うものもあります。
受け手が脱力がしやすいのはもちろん寝た状態で行う手技ですが、全ての患者さんが最初から寝た状態で施術を受けられるわけではありません。
- 急性腰痛(ぎっくり腰)
- 頚椎・腰椎ヘルニア
など痛みが強く出現している場合は、座った姿勢から動けない、寝転ぶことができない、一度寝転んでしまうと起き上がることができなということがあります。
このような場合は、無理に痛みを我慢して施術を受けてもらうのではなく、まずできる姿勢から施術をしていくという考え方が大切です。
そのため、今回の手技のような座位でできる手技には、臨床上非常に重要な意味を持ちます。
痛みの改善の前に分析を目的にする
例えば急性腰痛で来院された場合、辛そうな様子を見ていると、一刻も早く痛みを取り除いてあげたいと思うことは当然です。
そこで施術者の思考も「痛みを軽減させること」が第一目的になってしまいがちですが、一度冷静になって筋骨格系のバランスを分析することが重要です。
痛みが強く、仰臥位も伏臥位もできないため、通常の四肢の検査ができない状態ですが、座位の状態で可能な限り情報を集めます。
- 頸部回旋や側屈の左右差
- 肩関節屈曲運動の左右差
など左右で動きの差が比較できる運動で検査をし、今回の手技をどちらにかけるかの判断に用います。
まずは片側に今回の手技であるエルボーをかけて、同じ検査で左右差の改善を確認します。
そして、必ず反対側にも同じ手技をかけて、同様に左右差の改善があるか、もしくはより左右差が顕著になるかを確認します。
痛みの改善を最初の目的とした場合、痛みが軽減された時点でその手技をかけることが正解だと思い込み、結果的に本当の意味での根本的な改善から遠ざかってしまうことがあります。
バランス療法では、どんな手技でもそうですが、まずは手技を試してみて、それが本当にその人のバランスを整えるものであるかどうかを確認します。
今回のような座位の手技で、できる検査が限定されていても、必ず手技の前後の変化を比較することを忘れないように、セミナーの最初にお話ししました。
左右の動きが整ったことを確認してから、初めて検査以外の動作をしてもらい、痛みの変化を確認していきます。
- 座位から立ち上がる時の動作
- 歩行などの分析
- できなかった姿勢の確認
急性腰痛症などでも、今回の座位の手技をかけているうちに、どんどん痛みが改善し、できる動作が増えてくることがあります。
来院時はマットに寝転ぶことができなかったのに、途中で痛みなく寝転べるようになったら、通常通り他の手技をかけていきます。
もちろん全ての患者さんが同じように変化するわけではないので、座位の手技だけでその日の施術を終えることもあります。
座位のエルボーとは
座位のエルボーは、肩関節検査で屈曲可動域が少ない側に行う手技です。
バランス療法の手技では、仰臥位のエルボーという手技がありますが、こちらは肩関節の屈曲可動域が大きい側に行う手技なので、同じエルボーという名称ですが、反対の作用なので注意が必要です。
座位で受け手の手掌を反対側の肩に置いて、その上から術者の手を置き固定します。
術者は反対側の手で受けての肘関節を保持し、吸気で肩関節を屈曲方向に操作し、呼気で元に戻すという操作を繰り返し行います。
操作は4,5回繰り返し、最後の呼気で受け手の肩と肘の保持をそっと離し、ナチュラルな上肢の位置に戻します。
座位のエルボーの目的
座位のエルボーは、大胸筋や広背筋などの働きが強く、求心方向に引きつけられている上肢に対して、内転や伸展筋の緊張を弛緩させ、拮抗筋・反対側上肢との機能のバランスを整える目的で行う手技です。
同じような目的で行う手技に、仰臥位で行う外側胸筋神経からの調整や、求心側のターニングという手技があります。
この手技は、冒頭で解説したように特定の姿勢しか取れない患者さんの施術をする場合に非常に有効な手技です。
もちろんそれだけでなく、座位であることで受け手のポジションが異なるので、大胸筋や広背筋に仰臥位とは違う角度から刺激を入れることができるため、急性症状以外の患者さんにも使用します。
今回のセミナーで伝えた手技のポイント
今回のセミナーでも、術者の肩峰を結んだFrontと、正中線・乳頭線・肩関節のラインを使った新しい手技の身体の使い方を中心に解説しました。
術者のポジション
この手技は受け手が正座もしくは椅子に座った状態で行うので、受け手の座り方によって術者のポジションが変わります。
床との設置面が大きく、安定して座ることができる正座の方が高い効果を得やすいですが、正座ができない場合は椅子に座って手技を行います。

受け手が正座している場合は、術者は手技をかける側に片方の下肢を立膝で構えます。

椅子の場合は、術者は完全立位で構えます。
ポジションの共通点として、受け手の背中側におく下肢は、受け手の背中と平行に近い角度になります。
受け手との身長差などで、手技をかける距離感や高さが微妙に異なりますが、最初から完璧なポジションを目指さずに、微調整して合わせます。
バランス療法の手技では、手の操作は下肢のセッティングが終わってからになることが多いですが、今回の手技では先に受け手の手を反対側の肩に置くことから始めます。
ここから手技をかけやすい位置にポジションを微調整し、手技を開始します。
作業ラインとFront
今回の手技で作業ラインとして捉えるのは、肩に乗せた受け手の手と前腕のラインです。
このラインに対して、術者はフロントが平行になるように構えます。
こうすることで、術者の動きと受け手の肩関節の動きが綺麗に連動するようになります。
術者の上肢のライン

ポジションとフロントのセッティングが終わった状態で、術者は片方の手を受け手の肩関節においている手の上、反対側の手は受け手の肘関節を保持しています。
術者は少し脇をあけた状態で、肩関節をライン2として、肘を3、手関節を2として2-3-2のラインを作ります。
今回の手技では、左右両上肢を2-3-2のラインにし、それを保ったまま手技の操作を行います。
これでF-LAPのセッティングが全て完了します。
実際の関節の操作
これまでのバランス療法の手技では、左右の両上肢の3関節(肩・肘・手関節)をダイナミックに動かして手技を行ってきました。
今回の座位のエルボーに関しても、左右の上肢を屈曲・伸展方向に大きく可動させることで、受け手の肩関節を操作していました。
F-LAPの考え方を取り入れてからは、ポジションと2-3-2のラインを守ったまま、フロントを前後に動かすだけで、受け手の関節の操作が可能になります。
これにより、手指の力を一切使うことなく、全身で関節の操作が行えるようになります。
術者は全身の筋肉を使って手技を行うことになりますが、その分受け手の負担は減り、負荷がなくスムーズな関節の操作が可能です。
また、上肢だけでなく、立位の場合は膝関節の伸展を少し緩めて、膝の屈曲と伸展を使うことで、文字通り全身を使って安定した手技ができます。
セミナーを終えて
実際の臨床で座位の手技をかけると、仰臥位や伏臥位に比べて、患者さんの力が抜けにくく、術者の思った通りの操作ができないことがあります。
もちろん、身体を痛めてしまうと、脱力自体がしにくくなるものですが、やはり術者がいかに安定した状態で患者さんに触れて、リラックスしやすい状況を作るかというのは大切です。
特に、今回セミナー冒頭でお伝えした、急性症状などでは患者さんの不安感は通常より強くなっていると考えられます。
痛みによって動きに制限があり、術者側としても十分な検査ができない状態だからこそ、1つ1つの動作をしっかりみること、少ない柔らかい刺激でしっかりと手技の効果を出すことができれば、分析もその後の施術の組み立ても楽になります。
上肢をほとんど動かさずに、目的の関節を操作するには慣れが必要なので、習得できるように練習しましょう。
