東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2018年6月24日の東京セミナーは肩甲帯にアプローチする手技を行いました

ベーシックコースの18種類の手技の中で、伏臥位で上肢に関連する手技は2つしかありません。さらに肩甲骨や鎖骨や上腕骨など、肩関節に他動的に動かす伏臥位の手技は今回のフロッグ操法のみです。

今回のフロッグ操法は、仰臥位の上肢の手技と比べ一番の違いは床に肩甲骨が接していない点です。その状況で手技を行うと、仰臥位の手技ではアプローチし難い僧帽筋、棘上筋、棘下筋、大円筋、小円筋等にも行う事が出来、左右の筋機能の差の改善にはとても有効的です。

手技の構成と目的

伏臥位で両方の上肢に行う手技。

検査で肩関節の屈曲差と肩甲挙筋の緊張差を確認する。

肩甲骨の可動を抑えた上で、肩関節の外転内転運動をする。

手技を行うことで、肩関節に関連する左右の筋機能を対称性にし、肩甲上肢帯の運動性を向上させることが目的。

臨床での経験

私の臨床では、ギックリ腰の時に今回のフロッグ操法をよく使います。個人的な考えですが、ギックリ腰の時は足の手技より手の手技がかけやすく、仰臥位で長く寝かせると次に動く時に痛みが強く出る場合が多いです。伏臥位も長過ぎるとダメですが、仰臥位よりはまだキープしやすいと思います。

そしてゆっくりフロッグ操法をして肩を動かし、少しづつ左右の背部の筋のバランスを均等にします。広背筋や僧帽筋、大円筋が左右対称性に機能し始めると必ず膝関節の検査に変化が生まれます。

五十肩など伏臥位で肩関節が外転できない時などは今回の手技は出来ませんが、伏臥位が出来ない場合は仰臥位の手技で補うようにします。

手技の手順

肩関節遠心性側

最初に屈曲優位側から行う。

手刀で肩甲骨上角を固定し、受け手の前腕を持ち、呼気で前腕部を挙上(肩関節外転運動)する。この時、固定する肩甲挙筋が緊張側か否かで固定時の呼吸を変える。元々可動性の良い側なので、挙上させる上で抵抗感は少ない。吸気で元の位置に戻す。

肩関節求心性側

次に反対側を行う。

手刀て肩甲骨上角を固定し、受け手の前腕を持ち、呼気で前腕部を下制(肩関節内転運動)させる。この時、固定する肩甲挙筋が緊張側か否かで固定時の呼吸を変える。可動性が悪い側なので、反対側のように動かし難い。吸気で元の位置に戻す。

手技における注意点

肩甲骨上角の固定が肩甲挙筋ではなく、肩甲骨を押さえつけてしまう

肩甲骨の外旋内旋運動を抑制するためであり、押さえつけると肩甲帯に筋緊張を与えてしまう。

前腕部を挙上(肩関節外転)する際、動かし難いと前腕部を持ち上げてしまう

前腕部を持ち上げる事で、上腕骨が外旋し肩関節周辺に筋緊張を与えてしまう。

手技を行い元の位置に戻す際、スタート位置よりもオーバーして下げ過ぎる

スタート位置より下げ過ぎる位置に戻すと、棘上筋や三角筋を伸長させてしまい、左右の緊張差を生む結果となる。影響を受ける筋肉は違うものの、反対側も同じ事が言える。

術者の身体の使い方

どんなにルールを覚えても、それを実現するためのテクニックがないと再現できません。

そしてそのテクニックの裏には、術者の身体の動きが全てと言っても過言ではないほどテクニックに影響を与えます。

セッティング時の、足関節、膝関節、股関節の使い方。

手刀時の、肩関節、肘関節、手関節の使い方。

前腕部を上下に動かす時の、足関節、膝関節、股関節、肩関節、肘関節、手関節の使い方。

手刀を離すときの、肩関節、肘関節、手関節の使い方。

この全てが術者の動きと連動して手技が組み立てられます。

この動きを頭に入れ、常に再現できれば、ハイレベルな手技を行うことが可能です。

そのためには、日頃から高い意識の練習や臨床が必要だと思います。

セミナー後記

今回の手技はベーシックの中でも比較的難しく、1回2回やって身につくほど簡単な手技ではありません。セミナー生も初めての人も2回目の人も最初は苦戦してましたが、最終的にフォームもまとまり良い練習が出来たと思います。もっともっとしっかり練習し身につけてもらいたい手技の一つです。