突然右肩が痛くて上がらなくなった33歳の女性の美容師を施術しました

いつもギックリ腰を起こしたら来院するIさん33歳の女性美容師さんです。

「今、始業前に高い所を掃除して右腕を下ろした瞬間右肩に激痛が走り、そこから右腕が上がらなくなった」と電話がありました。

11時半にカットのお客さんのアポイントが入っているので、出来ればその時間までに腕が上がる様にして欲しいとの事でした。

動くと振動で右腕に痛みが走る

歩く時に右腕が動くと痛いらしく、少し右上肢内転内旋位をキープした状態。かなり痛みみたいで不安そうな顔で来院しました。

彼女は数年前にも、病院の点滴中に右の手関節と手指が全く動かなくなり、ハサミを動かすことが出来ず3週間仕事を休んだ事がありました。3〜4回施術して元通りに動くようになったのですが、今回もその時と同じ表情で来院しました。

まず全身の歪みをチェックする他動検査の前に、握力や自動運動でどこまで動くかをチェックします。

右握力はほぼ握れない状態です。握ろうとすると上腕二頭筋と大胸筋に強い疼痛があり、指を自由に動かすことができない状態です。

右肘は立位で40度弱程度まで屈曲出来る状態で、それ以上は痛みで曲げることが出来ません。

右肩は屈曲、外転挙上は一切動かず、激痛が走る状態です。

頭部回旋に制限があると思いきや、全く問題なく左右同じ様に回旋しました。この動きから頚椎には問題は無さそうと考えました。

痛い箇所は三角筋前部と上腕二頭筋と大胸筋のようです。患部を直接見た感じも、特に内出血や腫脹もなく筋断裂はないように感じます。

これらの筋肉が何らかの原因で肩の運動制限と疼痛を起こしていると思われます。ただ、腕を下ろしただけでここまでの強い痛みが出ることが不思議に感じます。

美容師の動きの一つであるハサミをお客さんの頭の高さまで持ち上げカットする動作(肘屈曲、上腕骨内旋、肩外転挙上)は、この時点では全く無理です。

残り55分。内心不安で、ちょっと厳しいかもと思いながら現状把握を終えました。

他動運動検査から分かること

バランス療法をする上で絶対に欠かすことが出来ないのが、この他動運動検査です。

主に3種類ですが、自動運動をしてもらってる時点で上肢の検査は出来ないと判断しました。

よって下肢の検査のみを行い、左右の大腿神経、坐骨神経、閉鎖神経、上殿神経、下殿神経支配の筋肉の緊張差をチェック。

この時点で確認できたことは、右下肢は内旋内転に優位性があり、坐骨神経系の筋緊張から非重心性に機能している。そして、左下肢はその反対の動作が優位に機能していることが検査から分かります。

今回の症状は右肩ですが、上肢の筋機能差の情報が少ない状態での施術スタートとなりました。

普段通り痛くない箇所から施術

バランス療法は患部を触る施術方法ではありません。全身の筋骨格を左右対称にすることが最大の目的で、その結果身体の不調が改善されるという考えです。よって今回も患部から離れた下肢から施術をスタートしました。

重心性に過剰に機能している左大腿四頭筋の弛緩と左ハムストリングスを緊張させるテクニックを選択。

下肢の検査を行った結果、最初とは全く違う動きになり左右対称性に下肢が動きました。この時点で、腰椎、胸椎、頚椎、頭蓋骨、肩甲骨とそれに付随する筋肉が左右対称性に機能し、右の上腕骨に関係する筋肉が正常に機能していると思いました。

しかし結果は、全く右肩は動かせる状態ではありません。痛みも変化せず、焦りだけが生まれました。

本来ならもう少し時間をかけ遠目遠目から刺激を入れるように施術しますが、11時半までに職場に戻らなくてはいけないとの事だったので、患部周辺の筋肉へのアプローチに切り替えました。

上肢の筋肉の情報がない場合

問題は肩甲帯を含む上肢の筋肉の緊張弛緩の情報が全くないという事です。

痛いから緊張しているとは言えません。左右の同筋肉の緊張差がどうなっているか?を知る事がとても重要です。

しかし他動検査できる状態ではありません。

この場合は左右に同じテクニックを用い、現時点で確認できる検査で判断します。

例えば、右僧帽筋が緊張している場合は、左僧帽筋は右と比べて弛緩しています。弛緩させるテクニックを選択し、右僧帽筋に行えば、緊張している右僧帽筋が弛緩し左僧帽筋が緊張することで脊柱は左右均等になり、結果下肢の検査が揃います。

しかし、逆に弛緩している左僧帽筋に弛緩させるテクニックを用いると、左僧帽筋はさらに弛緩し、右僧帽筋はその影響でより緊張します。これにより僧帽筋の左右差がさらに脊柱を傾けることになります。結果下肢の検査も揃わない状態になります。

これは、他動検査が出来ない場合や患者さんが脱力出来ず検査が思い通りに出来ない場合によく使う方法です。

 

筋肉の情報収集のために左右同じテクニックを使い、可能な検査で筋肉の状態を把握する

 

この方法は一時的に患者さんを歪ますことになりますが、全身の筋骨格を左右対称にするという目的を達成するためには必要だと思います。テクニックの試し打ちです。

上肢の検査が確定したので再施術

試し打ちは、当然上肢の筋肉のテクニックでないといけません。その中で上肢の関節を可動させずに変化を確認できるテクニックとなると限られてきます。

仰臥位で寝ている状態でも痛みがあり、さらに肘や肩を動かすとなると激痛が走ることは容易に想像出来ます。

よって関節運動をせずに行える上腕二頭筋腱長頭を弾き弛緩させるテクニックを選択しました。

まずは健側の左を弾き、下肢の再検査。結果、全く変化なし。というより、下肢の動きがより左右差が出た感じを受けます。

次に患側の右を弾き、下肢の再検査。下肢が左右対称に可動し、正中から外れないていない事が確認できました。

再検査をする前から既に良い方向に変化している兆候はありました。

右上腕二頭筋腱長頭を弾いている最中に胸郭の動きが大きくなり呼吸がしやすくなったので、この刺激が身体と調和した=右の上腕二頭筋が左と比べ過緊張している事が明確になりました。肩関節屈曲筋である右上腕二頭筋が緊張しているので、右肩関節は左と比べ屈曲優位に機能している事が分かります。

上記の情報から、以下の筋肉にアプローチするテクニックを選択しました。

  • 1.右上腕二頭筋腱長頭を弛緩させるテクニック
  • 2.右肩甲挙筋を弛緩させるテクニック
  • 3.左僧帽筋上部中部を緊張させ、同時に左広背筋を弛緩させるテクニック

この4つの筋肉を意識し、3種類のテクニックで左右の上肢帯の筋肉の緊張弛緩状態を均一にすることで痛みの改善を狙いました。

検査上は間違いない施術を行うが・・・

本来であれば狙った通りに3つのテクニック全てで改善できるはずなのですが、まだまだテクニックが未熟のため右上腕二頭筋腱長頭のテクニックしか変化せず、時間も無かったため1種類のテクニックに集中して行うことにしました。

4〜5回弾き、握力を確認。最初より握る力が増しました。

また同じテクニックを4〜5回。仰臥位で寝てても痛かった状態が随分改善。仰臥位の状態ではありますが、右肩関節が他動運動で外転が可能になりました。しかし、肩と肘の自動運動は改善見られず。

同じテクニックを続けると刺激過多になり逆に筋緊張を生むので、休憩の意味で下肢を施術。その後同じテクニックを繰り返し、肩・肘の可動範囲拡大と疼痛軽減を図りました。

6回目に自動で肩を動かしても痛くない範囲が広がり、不安な気持ちから自信となり、あとは回数が増す毎に肩関節の屈曲も外転も自動運動が可能になりました。

完全に痛みの消失や可動域の改善までは出来ませんでしたが、サロンワークが出来そうと最後は笑顔で帰ってくれました。

数時間後、その日予約が入っていた全員をカット出来たと連絡を頂きました。右腕を完全に上げるとまだ痛みがある程度で運動制限はほぼなかったようです。

翌日も来院してもらい、2回目の施術終了時には右肩の痛みも無くなり関節可動域も正常に運動できるようになりました。

急性症状は原因となる筋肉へ直接アプローチが必要な時も

慢性症状なら患部から遠い箇所から施術する事がほとんどですが、今回のように急性症状の場合、全身を揃えても過緊張を起こしている患部に直接施術しないと変化しない場合もあります。

変なプライドで出来れば患部を触らずして改善したかったんですが、今回は全く無理でした。
今回直接アプローチしたのは上腕二頭筋腱長頭です。

筋肉を触って緊張しているかどうかではなく、右と左を比べて緊張しているか弛緩しているかが重要と考えます。

その判断は他動検査でしか判断出来ません。今回はテクニックの試し打ちをすることで右が緊張側と判断出来ました。

この判断が出来なければ、施術のスタートも出来ないし改善することも難しいケースだったと思います。

 

検査の重要性

どんな治療師も改善させるための手技(テクニック)を学び、経験を積み精度を上げようと日々努力してします。

しかし、手技と同じもしくはそれ以上に検査の精度を上げなければ結果は出ないと断言出来ます。

検査そして施術後の再検査でしか本当の改善を計り知ることが出来ないからです。

バランス療法は解剖学に沿った検査に重きを置き臨床を行っています。

 

 

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