前腕両骨骨折後のリハビリを目的に施術しました。

当院は外傷等のリハビリで来られる患者さんは少ないですが、元々通われている患者さんが骨折後や手術後のリハビリ目的で来られるケースがあります。

骨折後のリハビリのケースにバランス療法を行い、どのように変化し何を意識したかをまとめました。

 

橈骨遠位端骨折と尺骨骨折

中学1年生の男の子です。以前腰痛で施術を受けたことがありましたが、腰痛の改善後は来てませんでした。

部活でサッカーをしている最中にボールの上に乗ってしまい、左手から転倒しその場で左手首の周辺が腫れたそうです。連休中だったため受傷後すぐ病院に行けず、かなり痛かったみたいですが我慢したそうです。

連休明け、整形外科を受診し、レントゲン撮影で橈骨遠位端骨折と尺骨頭骨折と判明。前腕の2つの骨が折れていると医師から説明があったそうです。

橈骨遠位端骨折はギブス固定だけで済んだので転位もなかったと思われます。

4週間ギブス固定し、再度レントゲン撮影すると骨癒合も確認され、ギブスシャーレ固定になり同時にリハビリが始まったそうです。

病院のリハビリは、離開しないように徐々に動かし左手関節の可動範囲を広げる運動をしたそうです。

しかし予想以上に痛みと腫れが引かず、お母さんが連れて来られました。

 

1回目の施術前の状況

最初に左の手関節を確認するとかなりの腫脹があり、右と比較したら1.3倍くらい腫れていました。

自動運動をしてもらうと、左手関節の背屈と掌屈はゆっくりなら動かせるものの、角度が増すと痛みが強くなります。回内回外運動も痛みがあり、特に回外時は痛そうでした。

握力は手指は動くものの握り閉めようとすると手関節に痛みが走る状態でした。

 

自動運動の捉え方

当院に来られる患者さんにはほぼ全員主訴と関連した関節の自動運動をしてもらいます。患者さんに患部周辺の関節がどの程度動き、どこまで動かすと痛むかを確認しています。

理由は施術中に患者さんの歪みの見立てが間違ってないかを確認出来る事と、患者さんも施術中や施術後に変化を感じてもらえ身体のバランスが揃うと痛みや関節の可動が変化する事を理解してもらうためです。

私は、手技をする際歪みの見立てが間違っていないか常に不安を感じながら施術しています。見立てを間違って手技を行っても身体のバランスは揃わないので、検査には細心の注意を払っています。

施術中に他動検査と自動運動を確認すると、見立てへの不安は随分解消されます。

 

自動運動と他動運動の差

過去、私の患者さんが病院等のリハビリに通った際、他動運動によって動かし関節可動域があれば大丈夫と言われるケースが何例かありました。「最初は可動域が20度だったけど、90度まで動くまで改善したから終了です」と言われリハビリが終了したそうです。
病院や医学的には他動運動の改善で大丈夫なのかも知れません。しかし患者さんは自動運動で生活をします。他動運動で動いても、患者さん自身が動かすことが出来なければ快適に生活することは難しいです。

よって、他動運動による四肢の歪みの検査や患部(今回は左手関節)の自動運動の可動域のチェックはしますが、患部の他動運動による可動域の検査はしません。

リハビリとは、自動運動で関節可動域が確保され、且つ運動時に痛みがないことが理想のだと思います。

 

1回目の施術

骨折のリハビリの場合でも、バランス療法をすることには変わりはありません。左右の手足が対称性に動かせる様にし、本来の機能を向上させることで患部の改善ができます。

バランス検査

左右の上肢の動きの検査をするとかなりの差がありました。4週間もギプス固定し、三角巾で吊っていたので関節運動に左右差があって当然です。

下肢の検査も片腕が使えない状態で生活をしていたので、体重のかけ方に違いが起き足の動きにも大きな左右差がありました。

手や足の動きが左右対称ではないので、全身の筋肉が左右対称性に機能していないことが分かります。全身の骨格筋が左右対称性に機能せず骨格に歪んだ状態では、患部の前腕部の筋肉や関節にも影響が生まれます。

今回は、左前腕(患部)の腫れや痛みを改善するために全身の筋骨格のバランスを揃え、結果手関節の機能回復がどこまで出来るかを意識し施術しました。

手技

バランス療法では出来る限り患部を触らずに改善できればと考えます。患部周辺を触ると、筋の緊張が高まり、手技の質の低下や患部の痛みの誘発に繋がるためです。よって自動運動で痛みを伴う場合は患部を触らず、他の四肢や体幹から施術します。

全ての患者さんに筋骨格系を左右対称にすることを目的とし患部の変化を確認しますが、今回はリハビリの目的も加味し、左の手関節の自動運動状態、疼痛の変化、腫脹の変化など普段よりも局所の変化に注視しました。

まず最初の手技は、左右の下肢や右上肢を中心に組み立て、左上肢は一切触らず施術しました。

主に、大腿四頭筋やハムストリングスや広背筋など比較的大きな骨格筋の筋緊張の差を均等に機能するように施術しました。

時間にして約15分弱です。

確認

施術途中でしたが、他動運動である四肢のバランス検査で確認すると左右ほぼ同じになりました。まずこの時点で、患部の左上肢以外の四肢を使った手技でどこまで改善したのかを確認しました。

誰が見て一目瞭然で1.3倍程腫れていた左手関節は明らかに腫れが引いていました。

この時、歪みの見立ては間違っていないと少し安心できる瞬間です。

自動運動にて左手関節の背屈と掌屈をしてもらいました。

掌屈は、施術前が20度くらいだった可動が50度くらいに改善したものの、動作時痛が残ったままでした。背屈は、痛みで10度も動かせなかった関節が70度弱まで回復し、動作時の痛みはほぼ無くなりました。

左上肢に手技

この後、左上腕二頭筋や左肩甲挙筋の緊張を緩ませる手技を行い、左右の肩甲骨の高さや上腕骨の内外旋を変化させ、上肢が機能しやすいポジションにしました。

ここで患部と左上肢の動作に大きな変化がありました。最初よりマシになっていた腫脹が全く無くなり、さらに手首の痛みで手のひらを着けず肘を立てて寝返りしていた動作が、痛みが減って恐怖感も減り少しかばいながらも手のひらを着けて寝返りしました。

施術する側にとってこの動作の変化はとても貴重な情報です。自分の歪みの分析が間違っていたら、間違いなくこの寝返りは出来ないはずです。

分析通りに手技を行った結果、腫脹も治まり、左手関節の関節可動域も改善し、左上肢も難なく使えるようになったため、患者さんは寝返りの動作が出来るようになったと考えます。

初回で改善できるのはある程度と思っていたので、深追いせず1回目は終了しました。

ただ初回のみでは掌屈動作時の痛みが無くなる事はありませんでした。

 

2回目の施術

2回目は3日後に来院してもらいました。腫れた患部はほぼ落ち着き、ほんの少し赤みを帯びる程度で左右を見比べて分かる感じでした。関節可動域は初回とは比べものにならないほど改善していました。ただ掌屈も背屈も角度が増すと少し痛みが出る感じでした。

初回に終わった時より少し悪化している印象でしたが、生活の動作が楽になったと本人が言ってくれたのでそれほど気にしなくても良いと思いました。

腫脹も関節可動域も随分改善したので、初回では確認しなかった上肢3関節連動運動の確認をしてから、初回と同じ患部を触らない組み立てで手技を構成し、全身の筋骨格のバランスを揃えました。

20分ほど施術し、左右の見比べても分からない程赤みも消え、可動域を正常に戻りました。

上肢3関節連動運動とは、肩関節、肘関節、手関節が連動して動くか否かの確認です。

通常なら手関節の可動が十分で運動痛も改善したなら問題ないと捉えると思います。

しかしstyle Bのバランス療法では、1関節の関節運動改善では不十分と考えています。

 

上肢3関節連動運動を確認

手関節の背屈や掌屈や尺屈や橈屈が出来ても、実際の生活では手関節だけ動かしているわけではありません。必ず全身の筋肉や関節が連動して動いています。

今回の場合手関節は、連動する肩関節や肘関節の3関節でスムーズな関節運動が出来なければいけません。

仮に腫脹が無くなり、手の関節可動域が確保出来ても、3関節を使った日常生活を始めるとまた腫脹や疼痛が起こる場合があります。再発を防ぐためにも、連動した関節運動が出来ているか確認します。

確認方法の1例として、患側の上肢だけ「前に習え」をしてタオル等柔らかい物を軽く握り、そこから肩関節を伸展、肘関節を屈曲、手関節を背屈を同時に行ってもらいます。イメージは遠心位から求心位へとタオルを引き付ける動作をさせます。

手関節のみを背屈しても痛みが出ない場合でも、上記のように3関節を同時に動かした時の背屈では痛みが出ることがあります。

よって最終的な患部の動作確認は、日常生活で使う関節の動きで行うようにします。

この患者さんには、タオルを握ってもらい、タオルの端を私が握ることで少し抵抗のある状態にして3関節連動運動をしてもらいました。自分の身体に近づくにつれ、前腕の橈側の筋肉がひきつけられる感じがしました。

他にも求心位から遠心位に動かしたり、前腕部の回内回外運動も交えた連動運動も加え確認し、手関節と他の関節が協調しあえて運動できるかチェックしました。

 

左上肢を施術

これらの運動でこの患者さんの症状の改善が乏しい箇所が分かり、2回目に施術の途中で初めて患側周辺の手関節や肘関節を触りました。

手技は、左肩甲骨、左鎖骨、胸骨、左上腕骨、左尺骨、左橈骨を連動して動かす手技を行いました。しかし、手技は他動運動のため、これら骨に付着する筋肉を収縮させない様に施術しないといけません。

この患者さんの場合、肩伸展、肘屈曲、手背屈時の運動痛が顕著だったので、左の広背筋、大胸筋、三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、僧帽筋が左右や拮抗筋と調和し筋機能が正常に働くように施術しました。

施術後、上肢の3関節連動運動で確認すると、前腕の橈側の筋肉のひきつけは無くなり、患部周辺も全く痛みは無くなりました。

バランス療法では、四肢が左右対称に機能すればその日の施術は終了します。しかし、今回のような外傷後のリハビリでは、いつもとは違う視点を持ち、外傷の対象となる関節や関連する関節にアプローチするようにしています。その方が患者さんの不自由な生活から早く抜け出せます。

あとは、3関節連動運動を取り入れたリハビリ運動を指導し、家でもリハビリするようにお願いして2回目を終了しました。

 

その後

結局、患者さん本人がしっかり治したいとのことで、その後3回来てもらい、最後は腕立て伏せも難なく出来、部活にも復帰出来ました。

 

注意する点

今回は、全身の歪みを揃えると患部の改善も確認でき、全身から左上肢、そして患部へと手技を行う範囲を変化させ、最終的に全く問題のない状態にすることが出来ました。

しかし、もし全身の歪みを揃えても左上肢に手技を行っても全く痛みや腫脹の変化がなければ、患部へのアプローチはしなかったと思います。

骨癒合が確認されているとはいえ、ギブスカット後どんな生活をし、どんな使い方をしたのか確認できません。もし、症状の変化が乏しかったら、再度病院でレントゲンを撮ってもらう様にお母さんに伝えたと思います。

骨折部位に器質的な問題があれば病院などの医療機関で診てもらうしかありません。その判断を見誤らないといけません。施術は常に慎重に、冷静に、いろんな可能性を考えて行わなくてはいけません。

私は過去に4年間、整形外科や整骨院で勤務させて頂いたので、その時の経験が非常に役立っています。

外傷後の全身的考察

バランス療法では基本的にどんな患者さんでもどんな症状でも、四肢を揃えることで身体の筋肉と骨格を左右対称にし、結果機能が回復すると考えています。

しかし、今回は骨折部位は完治しているものの運動痛や腫脹が改善しない状態が数週間続いていたので、通常通りの施術だけでは時間や回数が必要だと感じました。

初回の施術で大幅に改善し患側を動かし易くなったため、2回目以降は左上肢を動かす手技を取り入れることで予想より早い改善が出来ました。

初回の大幅な改善は、脊柱や頭蓋骨に対し左右の肩甲骨や鎖骨そして上肢の筋骨格のバランスが改善され、結果患部への血流も改善し炎症が抑えられ、関節可動域も回復したと考えます。

2回目以降も、左上肢の3関節に関連する筋肉に筋収縮を起こさせない様に慎重に手技を行い、左右の上肢が対称性に運動機能させることが出来ました。

今回は整形外科にてレントゲン上で骨癒合が確認されていたので、あと数週間安静にしていれば勝手に治ったかもしれません。

しかし、歪んだ身体を元に戻す事で患部周辺の筋緊張や血流の改善、手関節の関節可動域と3関節の連動性の回復によりより早く改善する事が出来ました。

軽度の捻挫や人工股関節置換術後のリハビリでも同じことが言えます。

我々は、四肢を不自由なく使って生活したいはずです。しかし、四肢のたった1つの関節だけでも自由を奪われると生活が思う様に出来ないことが多々あります。

バランス療法では、患者さんが少しでも早く日常の生活を取り戻すお手伝いが出来ればと考えます。

 

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